御史台

御史台（ぎょしだい）とは

御史台は、中国の歴史において、中央政府に置かれた行政監察機関です。その起源は秦・漢時代に遡り、御史と呼ばれる官僚が監察事務を担当していました。御史が執務する役所は御史府と呼ばれ、蘭台や憲台とも称されました。南朝梁・陳から北魏・東魏・西魏・北斉を経て、隋・唐・五代・宋・金・元と、多くの王朝で設置されました。

御史台の役割

御史台は、百官の不正を糾察し、弾劾を行い、綱紀を粛正することを主な役割としていました。また、中央司法機関の一つとして、特殊な案件の審理も担当しました。

唐の時代、貞観年間以前は、御史台は百官の風聞を上奏するのみで、実質的な司法権力は持っていませんでした。しかし、貞観年間に台獄（監獄）が設置され、特殊な案件を受理するようになります。開元14年（726年）には、案件の受理を専門とする御史が設けられ、重大案件は御史台、刑部、大理寺の三つの司法機関が連合して審理するようになりました。

御史台の構成

御史台の長官は御史大夫、次官は御史中丞であり、その下に侍御史、殿中侍御史、監察御史が配置されていました。しかし、中唐以降は御史大夫が欠員となることが多く、御史中丞が実質的な長官として機能しました。

宋代になると、御史は寄禄官となり、御史台の業務には直接関与せず、監察事務は門下省の給事中や拾遺などの官職が担当するようになりました。金・元代でも御史大夫と御史中丞が設置されましたが、御史大夫は実務に関わらず、御史中丞が実質的な長官でした。

御史台の変遷

唐の光宅元年（684年）には、御史台が改編され、京官と軍隊の監察を専門とする左粛政台と、地方の監察を専門とする右粛政台が設置されました。その後、両台は統合され、特使を州県へ派遣して巡察を行うようになりました。神龍元年（705年）には再び左御史台・右御史台に改められましたが、太極元年（712年）に右御史台は廃止、翌年再設置、そして再び廃止という変遷をたどりました。また、唐は洛陽にも御史台を設置し、東都留台と称しました。中唐以降は、節度使や刺史などの外官にも御史台の官銜が与えられるようになり、これを外台と呼びました。

宋代には、元豊の改革の後に再び御史台が設置されましたが、留台は設けられず、外官も御史台の官銜を持つことはありませんでした。

元代には、御史制度が大きく発展し、地方に行枢密院や行中書省と同様に、御史台の機能を持つ行御史台が設立されました。

明代には御史台は廃止され、代わりに都察院が設けられました。清代も引き続き都察院が設置されました。

無官御史台

宋代には、官僚養成学校である太学の学生が、国事に関心を持ち、政府の政策を批判する気骨ある存在として、「無官御史台」と呼ばれることもありました。

関連項目

都察院：明・清代に御史台の役割を引き継いだ機関。
弾正台：日本の律令制度における監察機関で、御史台に対応する。

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