三善高子

三善高子の生涯と坂上田村麻呂との関係

三善高子（みよし の たかこ）は、平安時代に活躍した著名な大納言坂上田村麻呂の妻として知られる女性です。彼女の正確な生没年は記録に残っていませんが、父は三善清継であり、主に『今昔物語』にその名が登場します。高子自身の名前は他の文献にはほとんど見られず、唯一、清水寺の縁起に記載されています。歴史家の角田文衛は、高子が桓武天皇の後宮に仕えていた錦部姉継の姪ではないかと考えています。

坂上田村麻呂との出会い

高子がどのようにして坂上田村麻呂と結婚したかについての詳細は不明ですが、二人の関係は彼女が妊娠中の時期に大きな出来事を迎えることになります。『今昔物語』に記載されている逸話によると、宝亀9年4月8日（ユリウス暦778年5月9日）、田村麻呂は妻の高子のために鹿を求めて東山に向かいました。その途中で、大和国興福寺の僧侶、賢心に出会い、仏教の教えに触れます。

賢心の説教を受けて、田村麻呂は殺生の罪を深く悔い、観音に仕えることを決意しました。田村麻呂の帰宅後、高子は彼の行為について思い悩み、夫が自分のために鹿を殺したことを悔いるようになります。そこで、高子は彼女自身の悔いを晴らすために、家をもって堂を建立し、女性である自分の小さな罪を懺悔しようと決心します。

堂宇の建立と高子の功績

田村麻呂は、光仁天皇に賢心のことを報告し、僧侶としての正式な資格を認めてもらいます。これにより賢心は「延鎮」と名を改め、宝亀11年4月13日（ユリウス暦780年5月21日）には東大寺戒檀院で戒律を受けます。その後、田村麻呂は東山の山中に伽藍を建てることになります。

高子は人々に「金色ノ八尺ノ十一面四十手ノ観音ノ像」を造るように指導し、その像を安置しました。これらの活動は、彼女がただの妻に留まらず、仏教の発展に寄与した女性であることを示しています。後に、清水寺の「清水寺縁起」にも、高子が「亜相宗室三善命婦」として記載され、彼女の功績が言及されています。

清水寺の歴史的な意義

清水寺には田村堂（開山堂）と呼ばれる場所があり、そこには坂上田村麻呂と高子の夫妻像が安置されています。衣冠束帯姿の田村麻呂と貴族の姿をした高子が同じ台座に並ぶこの像は、二人の関係性を象徴しているとも言えます。また、開基の行叡居士や開山の延鎮上人の像も同場所に祀られており、彼ら全てが平安時代における信仰の重要な一部分を成しています。

三善高子は、歴史的な背景の中で自身の位置を確立し、当時の人々の生活や宗教観に影響を与えた女性であることが伺えます。その功績は、今なお清水寺や仏教界において賞賛されています。

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