三好行雄

三好行雄について

三好行雄（みよし ゆきお、1926年1月2日 - 1990年5月20日）は、日本における国文学の専門家として名を馳せた学者の一人です。東京大学の名誉教授であり、特に近代文学に関する広範な研究を行い、学界での中心的人物として知られていました。また、彼は「作品論」の提唱者としても重要な役割を果たしました。

略歴

三好は福岡県飯塚町（現・飯塚市）に生を受け、第五高等学校理科を卒業後、九州帝国大学の理学部に進学しました。しかし、彼は新たに東京大学の文学部国文学科に転入し、同大学院を修了。その後、1955年から共立女子大学で教鞭を取り、1962年には東京大学国文学科の助教授に就任しました。彼は東京大学において初となる近代文学専攻の教員であり、1972年に教授となった後は1974年まで文学部長を務めました。1986年には定年退官し、大妻女子大学と昭和女子大学でも教授職を務めました。

また、彼は山梨県立文学館の初代館長に就任しましたが、急性骨髄性白血病という病により在任中に急逝しました。このような彼の突然の死は、国文学界に衝撃を与えました。

研究の足跡

三好行雄の研究は、特に日本近代文学の作品論における新たな視点を提供したことから評価されています。彼は私立大学および東京大学教養学部の吉田精一とともに近代文学研究の重要な役割を担い、「作品論」という新たな研究領域を提案しました。しかし、彼の業績には批判も伴いました。1977年には関西大学の谷沢永一から「方法論論争」において厳しい指摘を受け、また1986年から1987年には、小森陽一との間で夏目漱石の作品『こころ』に関する論争を展開します。これらの論争は、彼を旧来の「実証派」と新しい「理論派」の間で葛藤させ、近代文学研究の苦難を象徴するものでした。

著作

三好行雄はその活動の中で数多くの著書を残しています。主要な著作には、1966年に発行された『島崎藤村論』や1967年に出版された『作品論の試み』、さらに1972年には『日本文学の近代と反近代』があります。また、1983年には『鴎外と漱石 明治のエートス』を上梓し、1990年に『近代の抒情』を発表しました。彼の著作は、近代文学の理解深化に寄与し、現在も多くの研究者に影響を与えています。

三好の死後、国文学界では「近代の人は呪われているようですね」と語られるほど、彼の急逝は大きな意味を持ちました。彼の業績と影響は、今もなお日本文学研究に脈々と受け継がれています。

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