三宅花圃

三宅花圃：近代日本を彩った女性作家

三宅花圃（みやけ かほ、旧姓田辺竜子）は、明治時代を代表する小説家であり、歌人としても知られています。1869年（明治元年）2月4日、旧幕臣の家に生まれ、華麗なる人生を送りました。本記事では、彼女の生涯、文筆家としての成功、画家としての才能、そして家族について詳細に解説します。

華麗なる生い立ちと教育

花圃は、東京・本所に生まれ育ちました。幼少期から優れた才能を示し、8歳で麹町小学校に入学、その後は跡見女学校、桜井女学校、明治女学校と進学、そして東京高等女学校（現・お茶の水女子大学）専修科を卒業しました。これは当時の女性にとって非常に高い教育水準であり、花圃の知的好奇心と向上心を物語っています。

同時に、花圃は10歳から和歌を学び、名家令嬢が集う中島歌子の「萩の舎」にも通いました。中島歌子の後任として日本女子大学の和歌教授を務めるなど、和歌の分野でも才能を遺憾なく発揮しています。

花圃の教育は、日本の伝統文化にとどまりませんでした。欧化教育の影響を受け、洋装で洋書を読み、男女交際や舞踏会にも参加するなど、当時の進歩的な女性像を体現しました。この多様な経験は、後の彼女の創作活動に大きな影響を与えたことは間違いありません。

女性初の近代小説『藪の鶯』

花圃の作家としての転機は、兄の急死がきっかけでした。兄の一周忌の費用を工面するために、彼女は小説を執筆することを決意します。坪内逍遥の小説『一読三嘆 当世書生気質』に刺激を受け、『藪の鶯』を一気に書き上げました。

この作品は、明治時代に女性によって書かれた最初の近代小説として歴史に名を刻みました。逍遥の校閲を受け、出版された『藪の鶯』は大きな反響を呼び、再版されるほどの成功を収めました。この成功は、若い女性たちが積極的に小説家を目指すきっかけとなり、樋口一葉など多くの女性作家に影響を与えたと言われています。

花圃は、樋口一葉の出版を斡旋するなど、後進の育成にも尽力しました。自身も小説や随筆を発表し続け、1920年には雑誌『女性日本人』を主幹として、多くの論評を発表しました。

画家としての才能

花圃は、小説家としての活動に加え、画家としても才能を発揮しました。彼女が残した作品として、『三十六花撰』という人物画集が知られています。家族や友人など、36人の人物を描き、それぞれの和歌を添えた、貴重な作品です。

さらに、花圃は河鍋暁斎に師事していた可能性が高いとされています。暁斎の絵日記には、花圃と思われる人物が描かれており、絵の稽古をしていた様子が伺えます。ただし、花圃自身は「絵はあまり好むほうではなく」と語っており、あくまで教養の一環として習っていたのかもしれません。

家族と晩年

1892年、花圃は三宅雪嶺と結婚し、5人の子供を育てました。その子供たちは、それぞれ社会的に成功を収めています。娘婿には政治家の中野正剛、実業家の船越重男、横山一平などがおり、花圃の家族は、日本の近代社会を担う家系だったと言えます。

昭和に入ると、花圃は文学界から遠ざかり、1943年7月18日に76歳で亡くなりました。彼女の死後も、その功績は高く評価されており、日本の近代文学史に大きな足跡を残しました。

まとめ

三宅花圃は、作家、歌人、画家として多方面で才能を発揮した、明治時代の傑出した女性でした。女性として初めて近代小説を発表した功績は、日本の文学史に燦然と輝くものと言えるでしょう。彼女の生涯は、近代日本の女性の生き方、そしてその可能性を示す、貴重な物語です。そして、その華麗なる人生と豊かな教養は、後世に大きな影響を与え続けています。

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