桜井女学校

桜井女学校は、1876年（明治9年）10月24日に櫻井ちかによって東京府麹町中六番町に設立された、キリスト教系の女学校です。当初は英女学家塾として認可を受け、櫻井ちかが民家を借りて開校しました。この学校は、日本の女子教育の黎明期において重要な役割を果たしました。

1879年には高等小学科を設置し、1880年には日本で最初の私立幼稚園を設立するなど、先進的な教育を積極的に導入しました。幼稚園の設立は、当時の日本の教育界において画期的な出来事であり、幼児教育の重要性を社会に広く認識させるきっかけとなりました。

1877年（明治10年）には、櫻井ちかの夫である櫻井昭悳牧師が函館に赴任することになり、校長を辞任しました。その後、矢嶋楫子が後任として就任し、学校はアメリカ長老教会の経営となり、ミッションスクールとしての新たな道を歩み始めます。アメリカ長老教会は、学校の運営を全面的に支援し、教育の質の向上に貢献しました。

ミッションスクールとなった桜井女学校には、メアリー・トゥルー宣教師が着任しました。彼女は女子の自治と自立を重視し、教育内容の改革に取り組みました。1884年（明治17年）には、キリスト教幼稚園の保母を育成するための幼稚保育科を設立し、専門的な人材育成を始めました。さらに、1886年（明治19年）には看護婦学校を設置し、医療分野でも活躍できる女性を育成しました。これらの学科は、当時の社会情勢に対応したものであり、女性の社会進出を促進する上で重要な役割を果たしました。

1890年（明治23年）には、桜井女学校は新栄女学校と合併し、女子学院として生まれ変わりました。この合併により、学校はより大きな規模となり、教育体制も強化されました。桜井女学校の精神は、女子学院にも受け継がれ、多くの女性の育成に貢献しました。

また、桜井女学校は、他の女子教育機関の設立にも大きく貢献しました。本校を母体として、新潟高田女学校や宇都宮女学校が開校されました。これらの学校は、桜井女学校の教育理念を受け継ぎ、それぞれの地域で女子教育の発展に尽力しました。さらに、貧しい家庭の女子のために女子独立学校を設立するなど、社会的な弱者に配慮した活動も行いました。これらの活動は、当時の日本の女子教育における格差を是正しようとするものであり、非常に意義深いものでした。

桜井女学校は、創設者である櫻井ちかの先見の明と、その後のミッションスクールとしての教育方針が結実し、日本の女子教育史に大きな足跡を残しました。その教育理念は、現代の女子教育にも大きな影響を与えています。

参考文献

『日本キリスト教歴史大事典』教文館、1988年
高橋昌郎『明治のキリスト教』吉川弘文館、2003年
『長老・改革教会来日宣教師事典』新教出版社、2003年
小檜山ルイ『アメリカ婦人宣教師』東京大学出版会、1992年

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