三家分晋

三家分晋（さんけぶんしん）

三家分晋は、春秋時代末期から戦国時代初期にかけて、強国であった晋が趙・魏・韓の三つの国に分裂・独立した事件です。この出来事は、中国史において春秋時代と戦国時代を区分する重要な出来事の一つとされています。

晋公室の衰退と六卿の台頭

かつて晋は、文公の時代に国力を大きく発展させ、城濮の戦いで楚を破り、春秋時代の覇者としての地位を確立しました。しかし、邲の戦いで楚に敗北して以降、晋の国内では内紛が頻発し、公室の勢力は徐々に衰退していきます。それに伴い、有力な家臣である大夫たちの影響力が増大していきました。

厲公は、有力大夫ではない胥氏を重用することで、国内の勢力バランスを保とうとしました。また、鄢陵の戦いでは楚から覇権を奪還するなどの功績を挙げましたが、有力大夫たちを牽制するために行った粛清が、かえって自身の立場を危うくします。讒言によって伯宗を殺害したり、他国から賄賂を受け取っていた郤氏一族を滅ぼしたりしたことが、欒書や中行偃らの反感を買い、最終的には暗殺されるという結末を迎えました。

厲公の死後、悼公が擁立されますが、大夫たちの権力はますます強まり、晋公室の衰退は加速していきます。祁氏・羊舌氏・欒氏・先氏といった公室系の氏族が相次いで滅亡し、韓起の死後に政権を掌握した魏舒がこれらの領地を分割。范氏・智氏・中行氏・趙氏・魏氏・韓氏ら有力大夫（晋の六卿）がそれぞれ県大夫に任じられ、領地を世襲することで、その権力を確立していきました。

六卿の淘汰と智氏の台頭

六卿の間でも勢力争いが激化し、特に范氏・中行氏が智氏・趙氏・魏氏・韓氏と対立を深めます。最終的に、最も有力であった趙氏が魏氏・韓氏と結び、范氏・中行氏を滅ぼしました。范氏・中行氏の旧領は、大部分が晋公室のものとなりましたが、残った領土を巡って六卿の間で争いが起こります。出公は、斉や魯に仲介を依頼し、事態の収拾を図ろうとしましたが、逆に六卿に攻められ、亡命中に死去するという悲劇的な最期を遂げました。この戦いを通じて、智氏が六卿の中で最も強大な勢力を持つこととなりました。

智氏の滅亡と三晋の独立

智氏は、次に趙氏を攻めようと魏氏・韓氏に協力を要請します。しかし、趙氏の当主であった趙無恤は、智氏を滅ぼした後に、魏氏・韓氏も標的にされると説得し、魏氏・韓氏は趙氏との同盟を決意します。紀元前453年、趙・魏・韓の三氏は連合して智氏を攻め滅ぼし、その領土を分割しました。この戦いを晋陽の戦いと呼びます。

智氏の滅亡後、晋の領土は趙・魏・韓の三氏によって分割され、晋は曲沃や絳といった小国に転落しました。紀元前403年、周の威烈王は、趙・魏・韓の三氏を正式に諸侯として認め、ここに三晋が独立を果たしました。その後、紀元前349年には、晋の残された領土も趙・韓の連合軍によって分割され、静公は庶民となり、晋は完全に滅亡しました。

三家分晋は、中国の歴史において、春秋時代と戦国時代を分ける画期的な出来事とされていますが、その時期については諸説あります。

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