三岐鉄道モハ120形電車

概要

三岐鉄道モハ120形電車は、1959年（昭和34年）から1963年（昭和38年）にかけて東洋工機で製造された電車です。三岐鉄道が1956年（昭和31年）に電化された後、初の自社発注による新製車両であり、カルダン駆動方式を採用した初の新性能車両でした。モハ120形（120・121・122）、制御車のクハ210形（210・211）の計5両が製造され、1966年（昭和41年）には増備車としてモハ130形130が追加されました。これらの車両は、それまで使用されていた旧型電車や内燃動車を置き換え、三岐線の完全電車化に貢献しました。

1982年（昭和57年）には、西武鉄道から譲渡された大型車両の導入に伴い、全車が高松琴平電気鉄道（琴電）に譲渡され、琴電1013形・1063形として2005年（平成17年）まで運用されました。

なお、モハ120形・クハ210形には、小田急電鉄から譲り受けた車両（モハ125、クハ215・216）も存在しましたが、これらについては別途記述します。

仕様

車体

車体は18m級の全金属製で、当時の名古屋鉄道3700系電車の影響が見られます。前面は貫通構造の平妻形状で、連結面側と運転台側には貫通幌が装備されています。腰板部には角型の標識灯、幕板上部には円筒型ケースに入った白熱灯の前照灯が設置されています。屋根は張り上げ屋根構造で、乗務員扉と客用扉の上には水切りが設けられています。

モハ120形・クハ210形は片運転台構造で、窓配置はd2D7D2（d:乗務員用扉、D:客用扉、数値は側窓の枚数）です。側面には1,100mm幅の片開き客用扉が2箇所あります。側窓は二段上昇式のアルミサッシで、戸袋窓も同様にアルミサッシで固定されています。

モハ130形は両運転台構造の3扉車で、客用扉は1,300mm幅の両開き扉です。窓配置はd1(1)D(1)2(1)D(1)2(1)D(1)1d（カッコ内の数値は戸袋窓）と異なり、側窓も一段下降式となっています。車内はロングシート仕様で、車体塗装は深緑色をベースに窓周りをクリーム色としたツートンカラーでした。

主要機器

主要機器は東洋電機製造製で統一されており、制御器は電動カム軸式ES-561を搭載しています。この制御器は14段の力行ステップのみで、発電制動機能はありません。主電動機はTDK-820/2C（一時間定格出力75kW）を1両あたり4基搭載し、駆動方式は中空軸平行カルダンです。歯車比は11:84と高めに設定されており、これは制御車を牽引する必要性から引張力を重視したためです。台車は住友金属工業製のペデスタル式ウィングばね台車FS-17Aを装備し、制動装置はA動作弁を用いたAMA-R/ACA-R自動空気制動です。電動発電機（MG）と空気圧縮機（CP）も電動車に集中搭載されており、モハ120形とモハ130形は単独走行も可能でした。

導入後の変遷

モハ120形とクハ210形は固定編成を組まず、他の車両との併結運転が行われました。モハ130形も同様に運用されました。後に車体塗装がイエロー地にオレンジ色の裾周りという新塗装に変更され、前照灯のシールドビーム2灯化、西武鉄道からの譲渡品である電照式行先表示器が設置されました。

しかし、1977年（昭和52年）以降、西武鉄道から譲渡された大型車両が導入されると、18m級の本形式は輸送力で劣るようになり、1981年（昭和56年）から導入された601系によって代替され、1982年（昭和57年）に全車が廃車となり、高松琴平電気鉄道へ譲渡されました。

高松琴平電気鉄道への譲渡後

琴電は輸送力増強と車両近代化のため、1982年（昭和57年）にモハ120形・130形・クハ210形を譲り受けました。モハ120形・クハ210形は1013形1013 - 1017、モハ130形は1063形1063と改称・改番されました。

導入に際しての各種改造

軌間が異なるため、台車は琴電のストック品であった形鋼組立型釣り合い梁式台車（汽車製造製2HE・3H、木南車輌製造製DT30）に交換され、主電動機も三菱電機製MB-115AFに換装されて吊り掛け駆動となりました。また、制動装置も電磁SME化されました。制御器は三岐線時代のものがそのまま使用されました。1013形では側窓に保護棒が追加され、1063形では3箇所の客用扉のうち中央の扉が埋め込まれて2扉構造となりました。車体塗装は琴電標準塗装となり、電照式行先表示器は撤去されました。

譲渡後の動向

1013形は1013-1014・1015-1016で固定編成化され、1017は950形と編成されました。1063形は増結用として運用されました。1015-1016は1987年（昭和62年）に台車と主電動機を新製し、再び新性能化されました。台車は住友金属工業製FS-530（電動車用）とFS-030（制御車用）、主電動機は三菱電機製MB-3239Aです。1063形では客用扉が交換され、窓の固定方法も変更されました。1013形・1063形は琴平線で運用されましたが、1100形導入に伴い、1013-1014・1017は1997年（平成9年）に廃車、1015-1016と1063も2005年（平成17年）に廃車となり、三岐鉄道からの譲渡車両は全廃となりました。廃車後は全て解体されています。

小田急より譲渡されたグループについて

モハ120形・クハ210形には、小田急電鉄2100形を譲り受けたモハ125・クハ215・216も存在しました。これらの車両は1976年（昭和51年）に導入され、連結面貫通路の狭幅化、前面貫通扉部への幌枠新設、前照灯のシールドビーム化などが行われました。モハ125は主電動機が国鉄制式のMT4に、台車がTR14Aに変更されましたが、クハ215・216は小田急時代のFS-14台車を維持しました。制御器は小田急時代のものがそのまま使われました。車体塗装は当初、深緑色に窓周りがクリーム色の旧塗装でした。後に新製車グループ同様、電照式行先表示器が設置され、新塗装に変更されましたが、小型車体と非冷房車であったため、101系導入に伴い、1990年（平成2年）から1991年（平成3年）にかけて廃車となり、モハ120形・クハ210形は形式消滅しました。

もう一度検索