三木翠山

三木翠山：大正・昭和期の京都を彩った画家と版画家

三木翠山（みきすいざん、1883年7月20日 - 1957年3月25日）は、日本画と版画の両分野で活躍した、大正から昭和期にかけての京都を代表する芸術家です。兵庫県に生まれ、幼少期から絵画への才能を示し、紺屋を営む三木利兵衛から指導を受けました。

その後、日本画壇の巨匠である竹内栖鳳に入門。竹杖会で研鑽を積み、確かな画技を習得しました。翠山は、従弟にあたる森月城の栖鳳門下への入門を後押しするなど、周囲との良好な関係を築きながら、芸術家としての道を歩んでいきます。

1913年（大正2年）、第七回文展で「朝顔」が入選し、華々しいデビューを飾ります。以降、文展や帝展といった権威ある官展で活躍し、その名は広く知られるようになりました。

翠山の芸術的才能は、日本画にとどまりません。1925年（大正14年）からは、版元である佐藤章太郎商店と協働し、「新選京都名所」シリーズを制作。京都の風俗や名所を鮮やかに描いた新版画は、高い評価を得ました。同年には、吉川観方と創作版画展を開催するなど、版画分野でも積極的に活動しました。

1932年（昭和7年）、第13回帝展では無鑑査の栄誉に輝きます。師である竹内栖鳳の没後である1942年（昭和17年）からは、画壇から身を引くように個展で作品を発表するようになりました。

1952年（昭和27年）には1年以上にわたって渡米し、美人画の個展を開催。その才能は海外でも高く評価され、1953年（昭和28年）にはメトロポリタン美術館から終身名誉会員の称号を授与されました。

晩年、翠山は、京都の繁華街に国際的な美術サロン「インターナショナル三木アートサロン」の設立を計画していました。地上7階、地下2階、総床面積1400坪という壮大なプロジェクトでしたが、悪徳不動産業者による詐欺被害に遭い、2000坪もの家屋敷アトリエを手放すことになってしまいます。この挫折は翠山に大きな打撃を与え、2年後、73歳で急逝しました。

翠山は、美人画や風俗画を得意とし、「嫁ぐ姉」や「元禄快挙」といった代表作を残しています。彼の作品は、時代を超えて人々の心を捉え、現代においても高い芸術的価値を保ち続けています。

主な作品

版画

「新選京都名所」シリーズ（佐藤章太郎版）：京都府立総合資料館に多くの作品が所蔵されています。シリーズには東山の雪、大堰川の花見船、都踊の点茶、大文字夜の木屋町、二條城の月、清水詣、春の嵐山、春の夜の清水、初夏の保津川、加茂川の夕立、通天橋の秋、金閣寺の雪など、京都の四季折々の情景が描かれています。

肉筆画

「嫁ぐ姉」
「元禄快挙」

参考文献

油井一人編『20世紀物故日本画家事典』（美術年鑑社、1998年）
上田正昭ほか編『日本人名大辞典』（講談社、2001年）
東京都江戸東京博物館編『よみがえる浮世絵　うるわしき大正新版画展』（東京都江戸東京博物館・朝日新聞社、2009年）
* 姫路市立美術館（高瀬晴之、山田真規子）編集『三木翠山展』（姫路市立美術館、神戸新聞社、2015年6月）

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