三永水源地堰堤

三永水源地堰堤

三永水源地堰堤（みながすいげんちえんてい）は、広島県東広島市に位置する、堅牢な重力式コンクリート構造を持つ堰堤です。この施設は、歴史的な価値と近代水道の発展における貢献が認められ、国の登録有形文化財に登録されるとともに、近代水道百選の一つにも選ばれています。

概要と役割

この堰堤は、東広島市西条町下三永を流れる三永川に築かれています。三永川は、穏やかな流れを見せる黒瀬川の支流の一つです。所在地は東広島市ですが、施設の管理運営は呉市上下水道局が行っています。これは、かつて軍港都市として栄えた呉市へ、必要不可欠な上水を安定的に供給するという重要な役割を担っていた歴史的経緯によるものです。現在でも、水源としての機能は維持されており、黒瀬川からの取水も可能な構造となっています。具体的には、吾妻子の滝のやや上流から約314メートルにわたる導水路を通じて、黒瀬川の水を取り入れることができます。供給先としては、現在は主に八本松町にある吉川工業団地への工業用水として利用されています。

歴史的背景と変遷

三永水源地堰堤の建設は、昭和初期における呉市の都市機能維持、特に人口増加に伴う上水需要の増大に応えるために計画されました。工事は1938年（昭和13年）11月に着工され、戦時下という困難な状況下でありながらも進められ、1943年（昭和18年）3月に無事竣工しました。完成後、長年にわたり呉市への重要な水源として機能し続けました。その歴史的な価値と近代水道施設としての重要性は高く評価されており、1985年（昭和60年）3月27日には、日本の近代水道の歴史を物語る施設として近代水道百選に選定されました。さらに、1999年（平成11年）7月8日には、建設当時の姿をよく残す土木構造物として、国の登録有形文化財に登録され、その文化的価値が改めて認められました。

市民の憩いの場として

三永水源地堰堤は、地域の住民からは施設名である「三永水源地堰堤」というよりも、親しみを込めて単に「三永水源地」と呼ばれ、憩いの場として広く認識されています。特に、季節ごとの自然美が楽しめる場所として知られており、春には満開の桜が訪れる人々の目を楽しませ、初夏にかけては壮麗な藤棚が見頃を迎えます。この藤棚は、関西地方でも有数の規模を誇るとされており、約100本もの藤の木が、総延長300メートル以上にわたって植栽されています。開花時期には、紫や白色の美しい藤の花房が長く垂れ下がり、まるで花のカーテンのような幻想的な景観を創り出し、多くの観光客を惹きつけます。毎年、桜の開花時期である3月下旬から藤の見頃が終わる5月中旬にかけて、一般向けに施設の一部が開放されており、多くの花見客や藤棚見物客で賑わいます。

アクセス

公共交通機関を利用する場合、JRバス中国の「水源地前」バス停で下車し、そこから徒歩でおよそ10分程度で到達できます。

関連施設

同じく呉市上下水道局が管理する施設として、国の重要文化財に指定されている本庄ダムがあります。こちらも近代水道の歴史を伝える重要な施設です。

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