三浦層群

三浦層群（Miura Group）

三浦層群は、神奈川県の三浦半島から千葉県の房総半島中・南部にかけて分布する、海成の地層群です。この地層群は、地質学的に重要な意味を持ち、その形成過程や地質構造から、この地域の過去の環境を知る上で欠かせない存在です。

概要

三浦層群は、第三紀中新世から鮮新世にかけて堆積した海成層で、上総層群によって不整合に覆われています。これは、地層の堆積が連続的でなく、途中で中断があったことを意味しています。

三浦半島では、三浦層群は下位から、

三崎層
逗子層
田越川層
池子層

の順に区分されています。これらの地層は、それぞれ異なる堆積環境を示唆しており、地層の構成や含まれる化石から、当時の海の様子を知ることができます。

一方、房総半島では、三浦層群はより複雑な構成をしており、

大崩層
奥山層
中尾原層

からなる下部層、

木ノ根層
天津層
千畑礫岩層

からなる中部層、

清澄層
安野層

からなる上部層に区分されます。これらの地層の分布や層序を調べることで、房総半島における地殻変動や堆積環境の変化を詳細に復元することができます。

さらに、房総半島では、三浦層群の上限である安野層と、上総層群の下限である黒滝層との間に、黒滝不整合と呼ばれる地層の不連続面が存在します。この不整合は、この地域における地殻変動や堆積環境の大きな変化を示す重要な証拠となります。

また、三浦層群の下位に位置する葉山層群との間には、鐙摺の不整合が見られます。この不整合面は、地層の重なりが不連続であり、地殻変動によって地層が傾いたり、浸食されたりしたことを示唆します。この鐙摺の不整合は、神奈川県の天然記念物に指定されており、地質学的に非常に価値が高いものです。

三浦市海外町では、三浦層群の地層中に、漣痕（波調層）やスランプ構造などの特徴的な堆積構造が観察されます。漣痕は、浅い海底で波や流れによって砂が運ばれた際に形成されたものであり、当時の水流の方向や強さを知ることができます。一方、スランプ構造は、堆積した地層が海底斜面を滑り落ちる際に形成されたものであり、当時の堆積環境の不安定さを示唆しています。これらの堆積構造も、神奈川県の天然記念物に指定されており、地質学的に貴重な存在です。

まとめ

三浦層群は、三浦半島と房総半島に分布する、中新世から鮮新世の海成層であり、その地層構成や堆積構造、そして不整合から、この地域における過去の地殻変動や堆積環境を読み解く上で重要な手がかりとなります。これらの地層の研究は、過去の地球環境変動を理解し、将来の変動を予測する上で不可欠です。

参考文献

地学団体研究会 編 『新版 地学事典』平凡社、1996年。ISBN 4-582-11506-3
小出良幸＊・平田大二・山下浩之・田口公則（神奈川県立生命の星・地球博物館）川手新一（武蔵高等学校） 著　＊責任編集　『かながわの自然図鑑① 岩石・鉱物・地層』株式会社有隣堂、2000年3月31日 初版第１刷発行

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