三田村 (広島県)

三田村（みたむら）

三田村は、日本の近代地方自治制度が確立される中で誕生し、かつて広島県高田郡に存在した村です。現在の行政区分では、広島市の政令指定都市移行を経て、安佐北区の一部にあたる地域となっています。この村は、約67年間の歴史を持ち、地域の自然環境や産業、交通網の発達とともに歩んできました。

地理

村域には、豊かな水量と清らかさで知られる三篠川が流れており、古くから地域の人々の生活を支え、農業用水源としても重要な役割を果たしてきました。川沿いの平地や周辺の山間部を含み、自然景観に恵まれた地域でした。

歴史

三田村の歴史は、1889年（明治22年）4月1日に施行された「市制町村制」に基づき、高田郡内に単独の行政村として発足したことに始まります。それまで存在した三田村が、近代的な自治体として改めて村制を敷いた形です。以来、太平洋戦争を挟む激動の時代を経て存続しました。昭和時代に入り、全国的に市町村合併が進められる中で、三田村もその流れに組み込まれます。1956年（昭和31年）9月30日、三田村は近隣の高田郡井原村、志屋村、高南村と合併しました。この合併により、これらの4つの村が一つとなって新たに「白木町」が誕生し、三田村としての自治体は廃止され、その歴史に幕を下ろしました。

地名の由来

「三田」という地名は、古くからの歴史的背景を持つとされています。一説には、古代において皇室の領地であった「屯田（みた）」に由来するという説が有力です。屯田とは、天皇や皇室に関わる土地を指し、その管理や経営が行われた場所であり、この地域が古くから朝廷と何らかの関わりを持っていた可能性を示唆しています。

産業

三田村の主要な産業は、地域の自然環境を活かしたものでした。農業は古くから基幹産業であり、三篠川の恵みを受けて米作などを中心に行われていました。また、副業として、あるいは重要な現金収入源として盛んに行われていたのが養蚕業です。桑畑が広がり、蚕の飼育から繭の生産までが行われていました。さらに、地域で採れる植物繊維などを利用した和紙の生産も行われており、手工業として地域の経済を支える重要な産業の一つでした。これらの産業は、村の人々の暮らしを支え、地域社会の発展に貢献しました。

交通

近代に入り、交通網の整備が進むにつれて、村の外部との繋がりは一層強固になりました。特に鉄道の開通は、地域にとって大きな出来事でした。1915年（大正4年）、現在のJR芸備線にあたる芸備鉄道が開通し、村内に「中三田駅」が開設されました。この駅は、村の玄関口となり、地域住民が都市部へ移動したり、物資を輸送したりするための重要な拠点となりました。鉄道の開通は、産業の発展や文化交流の促進にも寄与しました。

現在

三田村が存在した地域は、前述の通り、その後の市町村合併を経て白木町の一部となり、さらに広島市への編入を経て、現在は広島市安佐北区の一部地域としてその歴史を継承しています。自治体としての三田村はなくなりましたが、その地名は地域の通称として、また行政上の地番として残っている場所もあります。かつての村の歴史や文化は、地域の人々の記憶や記録の中に生き続けています。

参考文献

『角川日本地名大辞典 34 広島県』
『市町村名変遷辞典』東京堂出版、1990年

三田村の歴史は、広島県の廃止市町村のリストにも記されており、日本の近代史における地方自治体の変遷を示す一つの事例として位置づけられます。

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