三田純市

三田純市：上方芸能史に彩りを添えた作家

三田純市（みたじゅんいち、1923年12月22日 - 1994年9月1日）は、20世紀を代表する日本の落語作家、研究者、演芸作家、脚本家、そして随筆家でした。その幅広い活動は、上方芸能史に欠かせない足跡を残しています。本名は野村全作、俳号は道頓を使用していました。

大阪の活力に育まれた生い立ちとキャリア

1923年、大阪市南区道頓堀の芝居茶屋「稲照」の長男として生まれた三田は、幼い頃から芸能に囲まれた環境で育ちました。慶應義塾大学経済学部を卒業後、朝日新聞社販売部に勤務していましたが、1951年に退社。その後、松竹新喜劇の曾我廼家十吾、2代目渋谷天外に師事し、喜劇の脚本執筆を本格的に開始しました。

東京時代と上方芸能への貢献

1967年から1982年までは東京に拠点を移し、1969年には東京やなぎ句会の創設にも参加するなど、活動の幅を広げていました。しかし、彼の創作活動の中心は常に上方芸能、とりわけ落語や上方喜劇にありました。

三田純市の作品群は、上方芸能の伝統と現代性を巧みに融合させたものでした。落語家3代目桂米朝のために書き下ろした『まめだ（豆狸）』は、現在も演じ続けられる名作として知られています。また、戯曲の執筆や、多くの芸能関係者についての評伝執筆などを通して、上方芸能の継承と発展に大きく貢献しました。

主要作品と受賞歴

彼の創作活動は多岐に渡り、落語作品から喜劇脚本、そして随筆や評論まで幅広く執筆しています。代表的な作品には、落語の『まめだ（豆狸）』『とげぬき地蔵』、著書『道頓堀』『昭和上方笑芸史』などがあります。

その功績は高く評価され、1976年には『道頓堀』で芸術選奨新人賞を、そして1994年には『昭和上方笑芸史』で芸術選奨文部大臣賞を受賞しました。1988年には大阪市民文化功労表彰も受けています。これらの受賞は、彼の作品が、単なる娯楽作品ではなく、時代を反映した文学作品、そして貴重な文化遺産として認められたことを示しています。

著作物：上方芸能への深い理解と愛情

三田純市の著作は、上方芸能への深い知識と愛情に溢れています。単に芸能史を記しただけでなく、道頓堀という土地の風情や、そこに生きる人々の情熱を生き生きと描き出しています。

主な著書には、『上方芸能《観る側》の履歴書』『道頓堀 川・橋・芝居』『遥かなり道頓堀』『道頓堀物語 小説上方芸人譜』『とったらもぎどり』『大阪弁のある風景』『おおさかののろけ』『笑福亭松鶴』『御堂筋ものがたり』『上方喜劇 鶴家団十郎から藤山寛美まで』『昭和上方笑芸史』『大阪弁のある風景 続』などがあります。また、共著や編著にも多数携わり、『古典落語大系』『上方落語』『落語名人大全』など、多くの読者に親しまれる作品を残しました。

関係者との交流

三田純市は、多くの芸能人と交流を持ち、彼らとの関係性も彼の作品に影響を与えていると考えられます。慶應義塾大学時代の先輩である松本昇三との交流、そして小佐田定雄、やまだりよこ、秋田實、戸田学、日沢伸哉といった人物との関わりも、彼の創作活動に多大な影響を与えたと言えるでしょう。

まとめ

三田純市は、単なる脚本家や作家という枠を超え、上方芸能を深く理解し、愛し、それを後世に伝える役割を担った重要な人物でした。彼の作品は、現代においても上方芸能を知る上で貴重な資料であり続け、その功績は永遠に語り継がれるべきでしょう。

もう一度検索