松本昇三

松本昇三：上方演芸界に多大な貢献を果たしたプロデューサー

松本昇三(1921年8月12日-1996年9月4日)は、日本の放送業界、特に上方演芸史において重要な役割を果たした人物です。朝日放送の元プロデューサーとして、「お笑いの昇ちゃん」の愛称で親しまれ、数多くの演芸番組を世に送り出しました。彼の生涯は、幼少期の寄席体験から始まり、大学時代、そして放送業界での活躍と、一貫して演芸への情熱に彩られています。

大阪の松屋町筋に生まれた松本は、幼い頃から母親に連れられて寄席に通い、漫才や落語に魅せられました。この経験が、彼の後の進路に大きな影響を与えたことは間違いありません。慶應義塾大学法学部に進学後も、彼は大学生活よりも寄席通いを優先し、演芸への情熱を燃やし続けました。

1946年、慶應義塾大学を卒業した松本は、就職活動をすることなく、大阪戎橋松竹の楽屋に通い詰めて芸人たちと交流を深めました。この経験は、後に彼が放送業界で成功を収めるための重要な礎となりました。そして1951年、戎橋松竹をラジオ中継していた朝日放送に学芸部員として入社。寄席中継番組などを担当するようになり、二代目桂春團治の「春團治十三夜」など、多くの番組制作に携わりました。

1955年には、当時低迷していた上方落語を盛り上げるため、後輩の澤田隆治らと共に「上方落語をきく会」を企画。大阪高麗橋の三越劇場で第1回を開催し、引退間近だった四代目桂文團治や橘ノ圓都といった大物落語家を出演させるなど、大胆な企画で話題を集めました。若手や東京の落語家を積極的に招くなど、この会は現在も続くほどに成長し、上方落語界に大きな影響を与えました。

1958年には、六代目笑福亭松鶴、三代目桂米朝といった上方落語界の重鎮から、中田ダイマル・ラケット、かしまし娘といった人気漫才師、ベテランの松鶴家光晴・浮世亭夢若といった芸人たちと専属契約を結び、彼らを起用した数々の番組を制作しました。「漫才教室」「お笑い街頭録音」など、これらの番組は出演者にとっても代表作となり、松本昇三のプロデュース能力の高さを示しています。

その後、ラジオ制作部長、テレビ制作部長などを歴任した松本は、1966年に朝日放送を退社。1981年から1989年まではビデオワークスの専務として、松竹新喜劇の中継番組のプロデュースにも携わりました。晩年まで第一線で活躍し続けた彼の情熱は、多くの後進に影響を与え、日本の放送業界に大きな足跡を残しました。

松本昇三の功績は、単に番組制作にとどまりません。彼は、上方落語をはじめとする演芸界の活性化に大きく貢献し、多くの才能を世に送り出したプロデューサーとして、日本の放送史に名を刻んでいます。彼の情熱と才能は、これからも多くの人々に影響を与え続けることでしょう。

もう一度検索