三田育雄

三田育雄

三田育雄（みた いくお、1939年生まれ）は、日本の著名な造園家、環境デザイナー、観光コンサルタント、そして観光学者です。地域計画、農村計画、観光論を主要な専門分野とし、長年にわたり全国各地の地域振興および観光地活性化の第一線で活躍してきました。東北芸術工科大学名誉教授、長野大学教授、株式会社田園プラザ川場会長などを歴任し、その活動は多岐にわたります。

生涯とキャリア

東京都に生まれた三田氏は、1962年に東京大学農学部林学科を卒業しました。その後、東京大学生物系大学院修士課程林学専攻を修了し、1964年から1966年にかけてV.H.ピンクニーJr.設計事務所に勤務し、造園設計の基礎を学びました。続いて1966年から1968年まで北海道庁に在籍し、広大な北海道の地域開発や環境計画に関わる経験を積みました。

1969年、三田氏は自身の計画コンサルタント会社である株式会社ラック計画研究所を設立しました。これにより、民間コンサルタントとして全国各地の自治体や企業からの依頼に基づき、地域活性化、観光開発、環境計画に関する多様なプロジェクトを手がけることになります。この時期から、地域振興計画や観光地活性化計画の策定、観光施設の基本計画立案とその経営指導、観光客の実態調査、さらには都市と農村などの地域間交流を促進するまちづくり・むらづくりといった、彼のキャリアを特徴づける活動が本格化しました。

1993年には、教育の分野に進出し、東北芸術工科大学デザイン工学部環境デザイン学科の教授に就任しました。大学では、次世代の造園家や環境デザイナー、地域プランナー育成に尽力しました。特に、地域に根ざした実践的な教育を重視し、学生を伴って山形県内の地域づくりプロジェクトに取り組むなど、教育と実践を融合させた指導を展開しました。同年、自身が計画・経営に深く関わった道の駅「田園プラザ川場」の代表取締役も兼任し、経営者としての手腕も発揮しました。

2006年には、長野大学環境ツーリズム学部環境ツーリズム学科の教授として移籍しました。ここでは、環境と観光が共生する持続可能なツーリズムのあり方を探求し、地域資源を活用した観光振興策や、観光が地域社会に与える影響などを研究・教育しました。地域と連携したフィールドワークなども積極的に実施し、学生が実践的な知見を得られる機会を提供しました。2013年に同大学を選択定年退職し、現在は東北芸術工科大学名誉教授などの肩書きを持っています。

主な活動と業績

三田氏の長年の活動を通じて、多くの地域で具体的な成果が生まれています。代表的な業績としては、以下のものが挙げられます。

道の駅「田園プラザ川場」の計画・経営: 群馬県川場村において、計画段階からその後の経営まで一貫して深く関わりました。地域資源を活かした多機能型の道の駅として成功を収め、地域間交流の拠点ともなり、むらづくりに貢献した点が評価され、1983年度（昭和58年度）には日本造園学会賞（調査・計画部門）を受賞しています。
地域間交流の企画と実践: 川場村と東京都世田谷区との交流事業プロモーションなど、都市部と農村部を結びつけ、相互理解と活性化を図る取り組みを数多く主導しました。
大学教育を通じた地域づくり: 東北芸術工科大学や長野大学での教育活動の中で、山形県上山市での茂吉の里づくりや総合計画策定委員会委員長、山形県八幡町での体験交流型さとづくりなど、学生とともに地域課題解決に取り組む実践的なプロジェクトを推進しました。
その他: 三井物産相模湖ピクニックランド開発計画、山形県西川町における美しいまちづくり調査および診断とイベント支援、水源の森林保育・保全計画など、環境、景観、観光、地域開発に関する幅広い分野でプロジェクトを手がけてきました。また、関東富士百景選定委員会委員や上田市観光ビジョン策定委員会委員など、公的な役職も務めています。

専門分野

三田氏の専門分野は、地域計画、農村計画、そして観光論です。これらの分野を複合的に捉え、持続可能な地域社会の実現を目指した理論構築と実践を結びつけることにその特色があります。

著書

（いずれも共著）

『観光レクレーション計画論』（技報堂）
『地方都市創造への挑戦』（八朔社）
『農村と都市の交流』（ぎょうせい出版）
『環境を創造する』（日本放送協会出版会）

参考文献

* 篠原修著『ピカソを超える者は 評伝鈴木忠義と景観工学の誕生』技報堂出版、2008年。

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