鈴木忠義

概説

鈴木忠義（すずきただよし、1924年 9月20日 - 2018年 2月18日）は、日本の観光学及び景観学の分野における重要な研究者であり教育者です。東京工業大学の名誉教授であり、農学博士の学位を有していました。学術的な研究活動に加え、日本観光研究学会の初代会長を務めるなど、関連分野の発展に尽力。また、観光資源の評価や河川リゾートの研究、さらには地域振興にも深く関与し、「当て塾」の塾長や株式会社世田谷川場ふるさと公社の社長を歴任するなど、実践的な活動も展開しました。東京に生まれ、日本の国土計画や地域デザインに多大な影響を与えました。

経歴

鈴木忠義氏は、旧制東京府立第七中学校を卒業後、一年の浪人期間を経て弘前高等学校に進学しました。1949年に東京大学第二工学部土木工学科を卒業し、星埜和氏に師事します。卒業後、観光地の研究を志し、田村剛氏からの助言を受けて東京大学大学院林学専攻への進学を検討。加藤誠平氏の協力を仰ぎますが、結果として加藤氏の提案により東京大学農学部付属演習林の職員としてキャリアをスタートさせます。1949年には日雇、1950年には助手として勤務しました。

大学教員としての本格的なキャリアは、1961年に東京大学工学部土木工学科の専任講師に就任したことから始まります。1963年には同助教授となり、大学院生物系研究科の併任も開始。同年11月には都市工学科の助教授に配置換えとなります。1965年には東京大学大学院工学系研究科も併任し、教育と研究の幅を広げました。1966年には東京工業大学工学部土木工学科へ転任しますが、東京大学都市工学科の併任は継続。この間、東京大学の高山研究室や丹下研究室らと共に、福島県猪苗代における観光開発計画にも参画しています。1969年には東京工業大学工学部社会工学科の教授に昇進。同年、多摩美術大学建築科の講師も務めました。1973年からは東京大学農学部および大学院農学研究科も併任し、多分野にわたる教育・研究体制を築きます。

1982年、東京農業大学農学部教授に転じ、教育・研究の場を移しました。1990年には東京農業大学大学院農学研究科に造園学専攻が発足するに伴い、こちらも併任。1995年には株式会社アイ・エヌ・エーの特別顧問に就任すると同時に、東京農業大学の客員教授としても活動を続けました。

主な業績と評価

鈴木忠義氏の研究は、国土計画、都市計画、景観工学、観光計画など多岐にわたります。特に観光と景観を融合させた研究は、日本のこの分野において先駆的なものでした。彼の研究成果や社会活動は高く評価されており、多くの栄誉に輝いています。1969年には日本造園学会賞を受賞。1985年には「観光レクリエーション計画に関する一連の研究」の功績が認められ、日本都市計画学会石川賞を受賞しました。さらに、1996年には第14回日本造園学会上原敬二賞を受賞するなど、学術的な貢献が多方面から称えられました。これらの学術的な賞に加え、地域社会への貢献も認められており、2002年には世田谷区民栄誉章を受章。2003年には国家からの叙勲として勲三等瑞宝章を受章しています。晩年においてもその功績は記憶され、2017年には世田谷区名誉区民の称号が贈られました。

著書・翻訳書

研究成果や思想は、数多くの著書や翻訳書として発表され、広く読まれました。単著としては、初期の『自動車旅行の休泊施設』（1957年）、長年の知見を集約した『人間に学ぶまちづくり』（2003年）、そして『都市と農山村の交流』（2011年）などがあります。また、加藤誠平氏との共著『観光道路』（1955年）をはじめ、『サービス施設と道路景観工学』（中村良夫、田村幸久らと共編著、1973年）、『現代観光論』（1974年）、『観光・レクリエーション計画』（共編著、1984年）など、多くの共同作業や編著も手掛けています。さらに、『人間に学ぶみちづくり』（編者代表、2005年）や『みんなでつくる美しい道』（編著、2007年）といった、より実践的な内容を含む書籍も刊行しています。海外の重要な文献の翻訳も行い、シルビア・クロー著『道路と景観』（1965年）、クリストファー・タナード、ボリス・プシュカレフ著『国土と都市の造形』（訳著、1966年）などは、日本の景観論や計画論に大きな影響を与えました。

鈴木忠義氏の学術的、実践的な功績は、日本の観光学・景観学の礎となり、今日の国土や地域のあり方を考える上で、その研究は依然として重要な示唆を与え続けています。

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