三菱ふそう・キャンター

三菱ふそう キャンター：小型トラックの歴史と進化

三菱ふそうキャンターは、1963年の初代モデル登場以来、長年にわたり日本の物流を支えてきた小型・中型トラックです。その歴史は、技術革新と市場ニーズへの適応の連続であり、数々の革新的なモデルを生み出してきました。ここでは、キャンターの各世代の特徴、派生車種、そして海外展開について詳しく解説します。

初代 T720型 (1963年 - 1968年)

1963年3月、三菱初の小型トラックとして2トン積みのT720型が登場しました。キャブオーバー型を採用し、広い視界と容易な運転操作性が特徴でした。エンジンには、最高出力68psの直列4気筒1,986ccの4DQ1型ディーゼルエンジンを搭載し、走行性能と経済性で高い評価を得ました。

2代目 T90型 (1968年 - 1973年)

1968年7月には、「ニューキャンター」として2代目が登場。丸形4灯ヘッドライトが特徴で、フロントグリルと一体化されました。テールランプはコンビネーションタイプに変更され、トランスミッションはフルシンクロ化されました。ディーゼルエンジンに加え、ガソリンエンジン車も追加され、多様なニーズに対応しました。

三菱ふそうは、キャンター生誕50周年を記念して、2013年の東京モーターショーで1970年式2代目キャンターのレストア車を展示しました。これは「ふそう名車復元プロジェクト」の一環で、開発・生産・販売各分野の社員有志によって行われました。

3代目 T200型 (1973年 - 1978年)

1973年5月に登場した3代目は、T90型後期をベースに大幅なモデルチェンジを実施。2.5トン積、3トン積が展開され、80psの2700ccディーゼルエンジンを搭載し、機動力を向上させました。通称「Vキャンター」と呼ばれました。

4代目 FE1/2型 (1978年 - 1985年)

1978年11月に登場した4代目は、リアコンビネーションランプのデザインが変更されました。モデルチェンジ当初のキャッチフレーズは「黄金の足」で、テレビCMも話題となりました。このモデルからワイドキャブと3トン積車が設定され、多様なバリエーション展開が行われました。

5代目 FE3/4型 (1985年 - 1993年)

1985年10月に登場した5代目は、ヘッドライトが異形角形2灯に変更され、MMCエンブレムもスリーダイヤに変更されました。フロントディスクブレーキの一部採用もこの代から始まりました。1987年には、1.5トン積車が「キャンターガッツ」に名称変更されました。

6代目 FE5/6型 (1993年 - 2002年)

1993年11月にフルモデルチェンジされた6代目は、一部車種の前照灯にプロジェクタータイプを採用し、ドアアウターハンドルを縦型フラップ式に変更しました。また、曙ブレーキ工業製のツインキャリパータイプのベンチレーテッドディスクブレーキが採用されました。

7代目 FE7/8型 (2002年 - 2011年)

2002年6月に発表された7代目は、「GLOBAL FIT」をコンセプトに、ヘッドランプのデザインが大型のつり目状に変更されました。キャブオーバートラックとしては世界初のインパネシフトを搭載しました。2006年には、パラレル式ディーゼルハイブリッドシステムを採用した「キャンターエコハイブリッド」が発売されました。

8代目 FBA/FEA/B/C系 (2010年 - )

2010年11月に発表された8代目は、「タフ&ソリッド」をコンセプトに、ポスト新長期排気ガス規制と平成27年重量車燃費基準に適合しました。トランスミッションは、小型トラックとして世界初の6速DCTのDUONICが採用されました。2012年には、エコハイブリッドがフルモデルチェンジし、ハイブリッド用モーター内蔵デュアルクラッチ式トランスミッションを搭載しました。

9代目 FDA/B/FEC/D/FGA/B系 (2020年 - )

2020年10月に発表された9代目は、キャブデザインを一新し、「ふそうブラックベルト」をフロントフェイスに採用しました。左折巻き込み事故のリスクを低減させる先進安全装置「アクティブ・サイドガード・アシスト」を小型トラックでは国内初搭載しました。2023年には、電気小型トラック「eCanter」が2代目へフルモデルチェンジしました。

派生車種

キャンターガッツ: 1.5トン積クラスに使用された名称で、1987年から2020年まで設定されました。
キャンターエコハイブリッド: 2006年から販売されたハイブリッド車で、低燃費と環境性能を両立しました。

海外展開

キャンターは、日本国内だけでなく、海外市場でも販売されています。インドネシアでは「コルトディーゼル」として販売されていましたが、2022年に「キャンター」に車名を変更しました。また、メキシコではフレイトライナー・トラックスにより「360 715」として販売されています。

三菱ふそうキャンターは、その長い歴史の中で、常に時代のニーズに応じた進化を遂げ、日本の物流を支え続けています。今後も、環境性能や安全性能を向上させながら、多様なニーズに対応できるトラックとして、さらなる発展が期待されます。

もう一度検索