三菱・500

三菱・500とコルト600の歴史

三菱自動車工業の前身である三菱重工業が1960年から1962年にかけて製造した三菱・500とコルト600は、日本の自動車史に名を刻む存在です。これらの車両は、戦後の自動車業界に参入した三菱の初期の試みとして位置付けられています。特に三菱・500は同社が初めて自社開発した乗用車であり、戦後の環境に適応しつつ、独自のデザインと性能を追求しました。

三菱・500の概要

三菱・500は、1960年4月に市場に登場しました。当時、この車の開発を行ったのは新三菱重工業名古屋製作所で、戦時中に軍用機の製造をしていたエンジニアたちが中心となって設計を行いました。そのデザインは、当時のヨーロッパの小型車を学び取った合理的なものとなっています。三菱・500は、2ドアセダンとして提供され、全長3,140mm、全幅1,390mm、全高1,380mmというコンパクトなサイズを持ち、軽量な車体は490kgに設定されていました。

エンジンは空冷の直列2気筒で、排気量は493ccでした。最高出力は21PS、最大トルクは3.4kg·mに達し、3速マニュアルトランスミッションを介して最高速度は90km/hでした。また、サスペンションはトレーリングアームとコイルスプリングを組み合わせた設計で、快適な乗り心地が狙われていました。しかし、発売から2年後には販売が低迷し、1961年8月にはエンジン仕様の追加や改良が行われたスーパーDXモデルが投入されましたが、人気は伸び悩んだままで、最終的に製造中止となりました。生産台数からもわかるように、その登場は短命でありましたが、三菱自動車の乗用車事業への初歩的な一歩としての意義は大きいものでした。

コルト600の登場

その後、販売不振を打破するために1962年にコルト600が登場しました。これは三菱・500のビッグマイナーチェンジ版であり、デザインや内装が大幅に刷新され、車名もコルト600に変更されました。このモデルは、丸みを帯びた形状からよりアメリカンなテイストのあるスタイルへと進化し、テールフィンを取り入れた外観が特徴です。エンジンは三菱・500のスーパーDXと共通の594ccでしたが、型式はNE35B型に進化しました。

コルト600では、シフトレバーの配置がフロアからコラムへ移行し、使い勝手の向上が図られました。生産台数は3年間で1万3739台に達しましたが、販売面での回復には至らず、1965年に新型コルト800の発売に伴い生産は終了しました。

まとめ

三菱・500とコルト600は、三菱自動車が乗用車市場に本格参入する過程で重要な役割を果たしました。両車ともに、戦後の日本における自動車産業の基礎を築くうえで欠かせない存在であり、今もなおその歴史と価値は多くの自動車ファンに理解されています。デザインや機能性の試行錯誤を経て、三菱自動車が成長する礎を築いたことは間違いありません。

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