三菱・i-MiEV

三菱i-MiEV：世界初の量産型電気自動車の軌跡

2009年、三菱自動車は世界に先駆けてリチウムイオンバッテリーを搭載した電気自動車、i-MiEVの量産を開始しました。軽自動車「三菱i」をベースに開発されたi-MiEVは、ガソリンエンジンを永久磁石式交流同期電動機に置き換え、環境に配慮した革新的な車両として注目を集めました。

開発と技術

i-MiEVの開発は、2006年に研究車両の発表から始まりました。その後、電力会社7社との共同研究や、延べ29万5千kmにも及ぶ走行データの収集を通じて、バッテリー性能や走行性能の向上に努めました。開発には、運転者からのフィードバックも積極的に取り入れられ、残りの走行可能距離を1km単位で表示する機能などが追加されました。

車両の心臓部であるリチウムイオンバッテリーは、急速充電性能と高エネルギー密度、安全性を両立させた設計。また、家庭用電源（100V/200V）による普通充電にも対応していました。バッテリーの製造は、ジーエス・ユアサコーポレーション、三菱商事、三菱自動車が出資するリチウムエナジージャパンが行っていました。

制御システムには、新たに開発された「MiEV OS」を採用。モーター、インバーター、バッテリーを総合的に管理し、効率的なエネルギー管理を実現しました。回生ブレーキシステムも搭載され、減速時のエネルギーを回収することで航続距離の延長に貢献していました。

販売と展開

2009年7月、i-MiEVは法人向けに販売開始。2010年4月には個人向け販売も開始されました。発売当初は高価格でしたが、国からの補助金や価格改定によって、より多くのユーザーが購入できるようになりました。販売方法としては、メンテナンスリース方式が中心でしたが、後に現金販売も開始されました。

i-MiEVは、プジョー・イオン、シトロエン・C-ゼロとして欧州市場でも販売され、光岡自動車からも独自デザインの「ライク」が発売されました。北米市場向けには、専用ボディを持つモデルが開発され販売されましたが、2017年に販売終了しています。

性能と航続距離

i-MiEVの航続距離は、満充電時の走行可能距離は、使用状況によって異なりますが、公表値では100～120km程度でした。エアコンやヒーターの使用、バッテリーの劣化などによって航続距離は変化します。急速充電器を利用することで、30分程度で80％程度まで充電することができました。

モデルチェンジと改良

i-MiEVは、販売期間中に何度かマイナーチェンジや一部改良が行われました。グレード体系の変更、バッテリー容量の変更、航続距離の向上、安全装備の充実などが行われ、常に進化を続けました。2011年のマイナーチェンジでは、廉価版の「M」グレードが追加され、より幅広いユーザー層への対応を目指しました。

2018年には、全長が拡大され小型車扱いとなりました。同時に、グレード体系は「X」に統一されました。そして2021年3月、i-MiEVは生産終了となりました。

充電インフラ

i-MiEVの普及には、充電インフラの整備が不可欠でした。三菱自動車ディーラーでの充電体制が整備され、急速充電器も各地に設置が進みました。CHAdeMO協議会や地方自治体の取り組みも活用することで、実用的な走行が可能となっていました。また、日産自動車との協力により、互いの販売店で他社車の充電サービスも行う体制が整いました。

まとめ

i-MiEVは、世界に先駆けてリチウムイオンバッテリーを搭載した量産EVとして、日本の自動車産業に大きな足跡を残しました。量産化の過程で得られたノウハウは、後続のEV開発に大きく貢献し、EV市場の発展に重要な役割を果たしました。i-MiEVの成功と課題は、現代のEV開発においても重要な教訓として活用されています。また、整備体制の整備、販売戦略、そして充電インフラの整備など、多くの課題を経験し克服してきた歴史は、今後のEV普及に向けた取り組みの参考となるでしょう。

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