三遊亭鬼丸

「三遊亭 鬼丸（さんゆうてい おにまる）」は、江戸時代後期、文化・文政年間から歴史を持つ落語の名跡の一つです。この名前が文献に初めて確認できるのは、「東都噺者師弟系図」において、初代三笑亭可楽の門下であった東亭ハッ子が改名した初代東亭鬼丸としてです。番付上では1800年にはハッ子、1811年には鬼丸として記録が残っており、天保初年には引退または亡くなったと考えられています。この名跡は、時代によって東亭や三笑亭など様々な亭号が使われましたが、その正確な代数は不明瞭です。過去には、後に初代三遊亭圓生を名乗る人物や、橘家圓玉となった人物も鬼丸を名乗った記録が存在します。

現在の落語協会に所属する三遊亭鬼丸（1972年8月31日生まれ）は、本名を若生 晃一（わかお こういち）といい、長野県上田市の出身です。父親の仕事の関係で幼少期の一部を大阪で過ごした後、地元の小中学校、長野県上田染谷丘高等学校を経て東洋大学経営学部を卒業しました。大学卒業後は外食産業に勤めていましたが、激務により転職を考え始めた時期に、寄席で聴いた三代目三遊亭圓歌の落語に深く感銘を受け、「今日一番面白い」と感じたことが、落語家への入門を決意する契機となりました。

1997年1月、三代目三遊亭圓歌に入門。前座名として「歌ご」を名乗り、同年5月には鈴本演芸場にて初高座を踏みました。2000年6月には二ツ目に昇進し、名を三代目「きん歌」と改めます。この頃、若手落語家グループ「大江戸台風族」に「台風6号」として参加するなど、精力的に活動。2009年にはNHK新人落語コンクールで入賞を果たし、実力を確固たるものとしました。

そして2010年9月、入船亭扇里、林家きく麿、三代目蜃気楼龍玉、五代目柳家小せんといった同期と共に真打に昇進。この昇進を機に「鬼丸」を襲名しました。この襲名は、天保年間に活躍した東亭鬼丸以来およそ180年ぶりの名跡復活と発表され、話題を呼びました。

三遊亭鬼丸は、その歯に衣着せぬ、時に毒舌とも称される率直な芸風が特徴です。この芸風は、落語の寄席だけでなく、NACK5の人気ラジオ番組「GOGOMONZ」のメインパーソナリティや、テレビ埼玉の「鬼丸テレビ」でMCを務めるなど、幅広いメディアで支持されています。SNS上でも積極的な発言を行い、多くのファンを獲得しています。趣味はプロスポーツ観戦で、浦和レッズと阪神タイガースのファンです。喫煙者であり、近年の受動喫煙防止策やたばこ税増税に対して批判的な意見を表明するなど、社会問題に対しても自身の立場を明確にすることがあります。また、九代目桂文楽、桂ひな太郎らと共に池袋演芸場で企画落語会「落語会さきがき」を開催するなど、落語の普及活動にも努めています。かつて兄弟子である四代目三遊亭円歌のパワハラ問題に関連して、「弟子に人権はない」といった趣旨の発言をし、議論を呼んだこともありました。

落語家としての実力は、以下の受賞歴によっても証明されています。

日本橋演芸大賞（2003年、大賞）
北とぴあ若手落語家選手権（2003年、奨励賞）
第5回さがみはら若手落語家選手権（2006年、優勝）
令和元年度 彩の国落語大賞

古い名跡を受け継ぎながらも、現代的な感性と毒舌を交えた独自のスタイルで、落語界のみならず様々なメディアで活躍を続ける落語家です。

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