三間安市

三間 安市

日本の実業家として知られる三間 安市（みつま やすいち）は、1903年（明治36年）8月3日にこの世に生を受け、1974年（昭和49年）2月7日にその生涯を終えました。戦後の日本経済において、鉱業やエネルギー分野の発展に多大な貢献をした人物として記憶されています。

岐阜県に生まれた三間安市は、まず1924年に長崎高等商業学校（現在の長崎大学）を卒業し、商業分野での基礎を築きました。その後、さらなる研鑽を積むため、1925年には東京商科大学（現在の一橋大学）本科へ進学。1928年に同大学を卒業すると、当時の主要企業の一つであった久原鉱業に入社し、実業家としての第一歩を踏み出しました。

久原鉱業での経験を通し、特に鉱山統制会では原価計算課長を務めるなど、鉱業界における経営や管理の要職を歴任しました。戦後、日本の産業構造が大きく変化する中で、1946年には日本鉱業の常務取締役に就任し、同社の復興と成長に深く関わることになります。

日本鉱業において順調にキャリアを重ねた三間は、1957年には同社の取締役社長に就任。高度経済成長期を迎える日本の基幹産業を支える鉱業会社のトップとして、その経営手腕を発揮しました。さらに、1962年には日本鉱業協会会長という鉱業界全体の代表としての重責も担い、業界の発展や政策提言に尽力しました。

彼の功績は国内に留まりませんでした。1968年には、当時の有力者であった田中清玄氏や中山素平氏らが主導した、日本の自主的な原油開発・油田確保計画に基づき、アブダビ石油が設立されます。この重要なプロジェクトにおいて、三間安市はその設立に深く関与し、初代の取締役社長に就任しました。これは、日本のエネルギー安全保障の観点からも極めて意義深い取り組みであり、彼の指導力は海外での事業展開においても発揮されました。

アブダビ石油の社長を務める傍ら、1969年には日本鉱業の取締役会長に就任し、長年率いた会社の経営の安定化に努めました。また、同年には共同石油の取締役会長も兼任しており、日本の石油精製・販売分野においてもその影響力を持ちました。

これらの多岐にわたる功績に対し、国家からの評価も得ています。1963年には産業振興への寄与が認められ、藍綬褒章を受章しました。晩年には、1973年に勲一等瑞宝章という高位の勲章を授与され、その長年の功績が称えられました。さらに、死去の年にあたる1974年には、従三位に叙せられています。三間安市は、激動の時代において、日本の鉱業、そしてエネルギー産業の要として、その知識と経験、卓越した経営手腕をもって多大な貢献を果たした実業家でした。

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