上ノ郷城

上ノ郷城について

上ノ郷城（かみのごうじょう）は、愛知県蒲郡市神ノ郷町に所在した日本の城です。別名として、西之郡之城、宇土城、鵜殿城、神ノ郷城とも呼ばれています。この城は、1957年（昭和32年）1月10日に蒲郡市指定史跡として登録され、その歴史的価値が認められています。

歴史

上ノ郷城の築城年代については、複数の説が存在し、正確な時期は判明していません。一説には、平安時代末期に壇ノ浦の戦いで勝利した褒美として、五男十郎という人物が当地を与えられ築城したと伝えられています。また、別の説では、戦国時代になってから築城されたとも言われています。

確かなのは、戦国時代には駿河国今川氏の家臣であった鵜殿氏がこの城を居城としていたことです。特に鵜殿長将の時代には、上ノ郷城を拠点として、現在の蒲郡市ほぼ全域と幸田町の一部を勢力下に置いていました。

1560年（永禄3年）の桶狭間の戦いで、鵜殿氏の主君であった今川義元が討たれると、三河国の松平元康（後の徳川家康）が今川家から独立し、周辺の武将たちが松平家に服属しました。しかし、上ノ郷城主の鵜殿長照は義元の妹の子であったため、今川方に留まり、上ノ郷城は松平氏の勢力圏内で孤立することとなりました。

1562年（永禄5年）に、松平元康と松平清善率いる松平勢が上ノ郷城を攻撃しましたが、堅城である上ノ郷城は容易には落城しませんでした。そこで元康は、伴与七郎ら甲賀流忍者（甲賀衆）を用いて城内に火を放ち、混乱に乗じて攻め入ったとされています。この戦いで、鵜殿長照は討ち死にし、長照の子である鵜殿氏長、鵜殿氏次は捕らえられ、上ノ郷城は落城しました。

なお、この戦いで戦死した城主を鵜殿長持とするのは誤りです。長持は鵜殿長照の父であり、1556年（弘治2年）に亡くなっています。

徳川家康の伝記である『烈祖成績』によると、甲賀衆が火を放った上ノ郷城内は、内部で造反者が現れたと誤解され混乱が生じたとされています。その混乱の中、城主の鵜殿長照は逃れようとしたところを伴与七郎（伴与七郎資定）によって討たれたと記されています。

上ノ郷城攻めには、伴与七郎の他に、伴中務勝永、伴太郎左衛門資家、伴伯耆守資綱ら80余名の甲賀衆が参加しました。特に資綱は、城主の鵜殿長照の子である氏長・氏次兄弟を捕縛する功績を挙げたとされています。

上ノ郷城落城後、元康は捕虜とした鵜殿兄弟と引き換えに、今川氏に人質として送っていた正室の瀬名姫と嫡男の竹千代、長女の亀姫らの返還を要求しました。当時の今川氏の当主であった義元の子、氏真は、親族であった鵜殿兄弟を見捨てることはできず、交渉は成立し、双方の人質が交換されました。

その後、上ノ郷城は攻め手に加わっていた久松俊勝の居城となり、俊勝の子である松平康元に引き継がれました。その後、家康が関東へ移封されると、池田輝政が城を所有し、その後廃城となりました。

遺構

現在、上ノ郷城跡の大部分は私有地のミカン畑となっています。しかし、郭や空堀、土塁、井戸などの遺構が残されており、かつて城が存在したことを示す石碑も建てられています。これらの遺構は、上ノ郷城の歴史を今に伝える貴重な証拠となっています。

脚注

注釈


出典

関連項目

日本の城一覧

外部リンク

上ノ郷城跡を愛する会 - 愛知県蒲郡市公式ホームページ

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