鵜殿長持

鵜殿長持は、戦国時代の三河国（現在の愛知県東部）で活躍した武将です。宝飯郡上ノ郷城（現在の愛知県蒲郡市神ノ郷町）を拠点とし、この地域を支配していました。別名として西郡城とも呼ばれています。

16世紀前半の鵜殿氏は、一族が分立し、現在の蒲郡市域の大部分を統治していたとされています。鵜殿長持自身は、駿河の戦国大名である今川氏に従属しており、「三州西郡一万石」を領していたと伝えられています。これは、当時の武将としては非常に大きな領地であり、鵜殿氏が今川氏の有力な家臣であったことを示しています。

さらに、鵜殿長持は今川義元の妹を妻に迎えており、今川氏との関係が非常に深かったことがわかります。この婚姻関係は、鵜殿氏の勢力をさらに強固なものにしたと考えられます。

また、鵜殿長持は文化人との交流も盛んでした。連歌師として知られる宗長や宗牧とも親交があったとされ、当時の文化的な交流にも積極的に参加していたことが窺えます。

鵜殿長持は、弘治3年（1557年）に自らの居城で亡くなりました。彼の死後、鵜殿氏は徐々に衰退していくことになります。

鵜殿氏は、東海地方における法華宗の有力な後援者としても知られています。15世紀から16世紀にかけて、多くの法華宗寺院の建立を支援しました。また、天文21年（1552年）には、隣国である遠江の本興寺の仏殿修復に際して、多額の寄進を行っています。この時の棟札には、鵜殿長持の名前が筆頭に記されており、彼が法華宗に対して深い信仰心を持っていたことがわかります。

鵜殿長持は、戦国時代の三河国において、武将としてだけでなく、文化人や宗教家としても重要な役割を果たした人物でした。彼の存在は、当時の政治、文化、宗教の動向を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

参考文献として、『蒲郡市誌 本編』や『蒲郡市誌 資料編』、『蒲郡町誌』、『静岡県の地名』、『北条氏康の妻 瑞渓院』、『寛政重修諸家譜』などが挙げられます。これらの文献は、鵜殿長持やその時代に関する詳細な情報を得るための貴重な資料となります。

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