上信電気鉄道デキ1形電気機関車

上信電気鉄道 デキ1形電気機関車の概要

上信電気鉄道のデキ1形電気機関車は、1924年に導入された歴史的な電気機関車です。この機関車は、当時最新の技術が詰め込まれた優れたスペックを持ち、日本の鉄道史において重要な位置づけを持っています。デキ1形は、同じく導入されたデキ2・デキ3と共に、ドイツ・シーメンスシュケルト社から購入された3両の一部であり、日本の鉄道の電化が進む中での象徴的存在です。

概要と設計

デキ1形は、全長9,180mmの独特な凸型車体を特徴としており、外観的にも非常に魅力的です。特に、他社の凸型機と違い、屋根は単一の滑らかな曲線を描いており、全体的に平坦なデザインになっています。この特徴は、シーメンス社製品の共通点ともされており、当時のドイツの技術力を如実に示していると言えます。また、当機の外観は、適度に改良が施されているものの、当初のデザインを多く残しているため、「上州のシーラカンス」として鉄道ファンに親しまれています。

導入の背景

デキ1形の導入にあたっては、1920年代の日本における鉄道電化の流れの中で、特に上信電鉄がドイツ製の電機を選んだことが大きな特徴です。第一次大戦後、日本へ譲渡されたドイツの鉄道機材を利用するために、上信電鉄は政治家・桜井伊兵衛の運動により、多くの優れた機材を取り入れることができました。この時期、井上工業の井上房一郎の仲介もあり、シーメンス社は日本市場での影響力を強化するために、積極的に技術提供を行いました。これにより、上信電鉄はデキ1形をはじめとするドイツ製機材を導入し、ローカルな運用を円滑に行うことができました。

機器構造

デキ1形の主要な機器類は、同時に導入された旅客用電車のデハ1形とも共有されています。主電動機にはシーメンス製DJ11B電動機を4基搭載しており、強力な牽引力を確保しています。さらに、主制御器は間接式のシーメンス製CIB10064Aを採用し、効率的な運行を実現。ブレーキ装置はドイツのクノールブレムゼ社製で、空気ブレーキと手ブレーキを備えています。台車もシーメンス製を使用し、しっかりとした安定性を確保しています。

運行とその歴史

デキ1形は、貨物列車の牽引に使われることが多く、1950年には国鉄高崎線からの臨時列車の直通運行にも活用されました。特に、石炭や薪炭、木材、繭、こんにゃくなどの輸送に重宝され、地元で親しまれる存在となっていました。その後、1994年に貨物輸送が廃止されると、デキ2は1995年に廃車となり、デキ1とデキ3は工事列車や臨時列車に転用されました。

保存と今後

デキ2は現在、富岡市の公園に静態保存されています。一方、デキ1とデキ3は、高崎駅構内での保存状況が続いています。2017年にはデキ1が出火事故に見舞われたものの、2011年にはデキ3が動態保存を目指して整備されることが発表されました。これらの電気機関車は、上信電気鉄道の歴史を語る上で欠かせない存在であり、今後の公開や保存活動に期待が寄せられています。

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