上智大学大学院理工学研究科・理工学部
上智大学理工学部・大学院理工学研究科
上智大学に設置されている理工学部および大学院理工学研究科は、科学技術分野における教育・研究の拠点です。学部の前身は1962年に設置され、東京都千代田区の四谷キャンパスを主な活動拠点としています。
教育理念と特色
上智大学理工学部は、「理工融合」と「文理融合」を主要な教育理念として掲げています。これは、理学と工学の分野横断的な連携に加え、人文・社会科学系の知識や視点も積極的に取り入れることで、幅広い視野と深い専門性を兼ね備えた人材を育成することを目指すものです。
上智大学全体の特長でもある少人数制教育が徹底されている点も、本学部の大きな特色です。特に卒業研究においては、教員一人あたり学生3～4名という、私立大学の中でも屈指の恵まれた環境で指導が行われており、学生一人ひとりに応じたきめ細やかな学びと研究指導を実現しています。
理工系分野においては比較的珍しく、女子学生の比率が高いことも注目すべき点の一つです。朝日新聞出版発行の『大学ランキング2025』における工・理工学部分野の女子学生比率調査では、31.4%を占め、上位にランクインしており、多様な学びの環境が整っています。
また、多くの大学で理工系学部が独立したキャンパスに置かれることが多いのに対し、上智大学理工学部は文系学部と同じ四谷キャンパス内に教育・研究拠点を置いています。この恵まれた立地は、他学部・他学科の講義を履修する機会などを通じて、学生が自身の専門分野に加え、人文科学や社会科学といった多様な分野に触れ、学際的な視点を養うことを容易にしています。
学部・学科構成
理工学部は現在、現代の科学技術が直面する複合的な課題に対応するため、以下の3つの学科で構成されています。
大学院研究科構成
大学院理工学研究科は、理工学専攻のもとに以下の9つの領域を設置し、より高度で専門的な教育と研究を推進しています。
創設の背景と歴史
上智大学における理工系教育の構想は、1958年の大学創立50周年記念事業として具体化されました。これは、イエズス会の創立者であるイグナチオ・デ・ロヨラが定めた教育規範「学事規定」において自然科学教育の重要性が示されていたことや、16世紀に日本（府内）に設立されたイエズス会の高等教育機関「コレジオ」でも自然科学が教えられていた、といった歴史的背景とも繋がっています。
1958年1月、当時の大泉孝理事長が理工学部開設の計画を発表し、学内に準備委員会が設けられました。学部の新設には多額の資金が必要であったため、国内外での大規模な募金活動が展開されました。国内では、石坂泰三（元日本経済団体連合会会長）、吉田茂（元内閣総理大臣）、土光敏夫（元石川島播磨重工社長）といった日本の経済界を牽引する人物が後援会に名を連ね、約2億円に及ぶ寄付が集まりました。
海外においては、当時のクラウス・ルーメル理事長が中心となり、ローマ法王庁、イエズス会本部、ドイツのケルン教区やドイツ政府、民間団体などから多大な資金援助や高価な機器・機械の寄贈を受けました。特にドイツからの支援は厚く、1960年3月には当時のアデナウアー首相が来学し、理工学部校舎となる3号館の敷地で鍬入れ式が行われるほどでした。
こうした国内外の支援のもと、上智大学理工学部は1962年4月に開学しました。当初は機械工学科、電気・電子工学科、物理学科、化学科の4学科でスタートし、工学と理学の融合、充実した言語教育、国際的な視野、そして教員と学生の密接な連携によるきめ細やかな指導体制を教育理念としました。
開学と同年の1962年には実験施設が完成し、ドイツの重工業メーカーであるクルップ社から円筒研削盤などの工作機械が寄贈されたことから、この実験棟は「クルップ・ホール」と名付けられました。1965年に建設されたマシンホールには最新鋭の電気動力計などが導入され、各学科の実験・実習環境が整えられました。1965年には新たに数学科が設置され、5学科体制となりました。
大学院教育も早期に整備が進められました。1966年には大学院理工学研究科修士課程が設置され、機械工学、電気・電子工学、物理学、化学、応用化学の5つの専攻が設けられました。さらに1968年には博士課程も増設され、学部から大学院までの一貫した教育研究体制が確立されました。理工学部の創設は、上智大学を文系・理系学部を擁する総合大学へと発展させる重要な一歩となりました。
その後、学科構成は時代の要請に合わせて改編され、2008年には現在の物質生命理工学科、機能創造理工学科、情報理工学科の3学科体制へと再編成されました。
著名な出身者
上智大学理工学部・大学院理工学研究科は、多岐にわたる分野で活躍する多くの卒業生を輩出しています。以下にその一部を示します（敬称略）。
政治、行政
加藤公一（元法務副大臣）
小林史明（デジタル副大臣）
河原淳平（警察庁サイバー警察局長）
坂田公夫（宇宙航空研究開発機構元理事）
経済
新居佳英（アトラエ創業者）
伊部菊雄（G-SHOCK開発者）
大西啓介（ナビタイムジャパン創業者）
谷本秀夫（京セラ社長）
マスコミ
倉野麻里（テレビ東京アナウンサー）
清水一幸（フジテレビジョン）
研究
赤津晴子（医学、国際医療福祉大学教授）
秋山仁（数学、東海大学名誉教授）
大越慎一（化学、東京大学教授）
フィデル・ネメンゾ（数学、フィリピン大学ディリマン校学長）
芸能・その他
阿部亮平（Snow Man|Snow_Manメンバー）
久保恵子（タレント、薬剤師）
佐々木圭一（コピーライター）
* 黒沢咲（プロ雀士）
このように、上智大学理工学部・大学院理工学研究科は、伝統と革新を融合させた教育環境のもと、多様な分野で社会に貢献する人材を育成し続けています。
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