上杉千郷

上杉千郷（うえすぎ ちさと）は、1923年4月3日に生まれ、2010年6月30日に没した、日本の著名な狛犬研究家であり、神職でした。彼は学校法人皇學館の常任顧問を務め、その研究と活動を通じて神道文化の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと学歴

上杉千郷は、岐阜県吉城郡古川町（現在の飛騨市）で、神社の社家19代目の家に生まれました。神宮皇學館大學付属専門部に在学中、学徒出陣を経験し、第一期海軍飛行専修予備生徒として海軍少尉に任官され、沖縄戦に参加しました。戦後、学業を再開し、1944年9月に神宮皇學館大學付属専門部を卒業。1950年3月には國學院大學文学部を卒業しました。

神職としてのキャリア

1952年4月、上杉千郷は総理府事務官となり、その後、法務大臣秘書官、郵政大臣秘書官を歴任しました。その後、全国神社総代会参事、全国神社会館館長などの要職を歴任し、1971年3月には岐阜県神社庁副庁長に就任しました。1982年4月には鎮西大社諏訪神社の宮司に就任し、神職としての活動を続けました。1995年4月には世界連邦日本宗教委員会議長、1998年7月には長崎県神社庁長、1999年4月には世界宗教者平和会議日本委員会評議員を務めるなど、宗教界においても幅広い活動を展開しました。

皇學館大学との関わり

上杉千郷は、2001年8月から2008年8月まで学校法人皇學館の理事長を務めました。理事長退任後は常任顧問に就任し、皇學館大学の発展に尽力しました。また、2003年からは中国社会科学院日本研究所の顧問兼研究員も務め、国際的な研究活動にも携わりました。

狛犬研究への情熱

上杉千郷は、長年にわたり狛犬の研究に情熱を注ぎました。その研究成果は、『狛犬事典』（戎光祥出版、2001年）などの著書に結実し、狛犬研究の第一人者としての地位を確立しました。2002年には、『狛犬事典』の研究成果に対し、神道文化会から表彰されました。その他にも、『日本全国獅子・狛犬ものがたり』（戎光祥出版、2008年）など、狛犬に関する著作を多数発表しています。

受賞と栄誉

1975年6月、上杉千郷は紺綬褒章を受章しました。1995年12月には、長崎新聞文化章を受章し、その功績が広く認められました。

晩年

上杉千郷は、2010年（平成22年）6月30日に87歳で生涯を閉じました。教育研究者である上杉千年は弟にあたります。彼の残した狛犬研究の業績は、今日の研究者にも大きな影響を与え続けています。

著書一覧

『茶道の中の神道』（鎮西大社諏訪神社、1992）
『狛犬事典』（戎光祥出版、2001）
『上杉千郷狛犬論考集』(2002)
『神基習合にみる神道の多様性』(2002)
『学生日記 : 学徒出陣前の学生生活』(2006)
『日本全国獅子・狛犬ものがたり』（戎光祥出版、2008）
『飛騨神主の笏紙』(2008)
『海軍日誌 : 学徒出陣学生』（皇學館大学出版部、2009）
『神主学徒出陣残懐録』（神社新報社、2010）

編著

『玉園山』（鎮西大社諏訪神社、1988）
『諏訪の月』（鎮西大社諏訪神社、1992）
『下呂温泉合掌村狛犬博物館図録』（狛犬博物館、1993）
『偏向原爆展示をただす！！ : 長崎の原爆展示をただす市民の会奮闘記』（長崎の原爆展示をただす市民の会、2001）

講演録

『獅子・狛犬の源流を訪ねて』（皇學館大学講演叢書第112輯）（皇學館出版部、2004）
『日本のこころ』（三重県護国神社奉賛会、2005）
『日本文化と神道』（皇學館大学出版部、2008）

もう一度検索