上杉朝興

上杉 朝興（うえすぎ ともおき）

上杉朝興は、戦国時代に活躍した武将であり、扇谷上杉家の当主としてその歴史に名を刻みました。彼は長享2年（1488年）に生まれ、上杉朝寧の子としてこの世に誕生しました。大名家の血筋を引く彼は、叔父の上杉朝良の養子となり、家族の中で育ちました。彼の家督を継ぐ運命は、叔父朝良の隠居を余儀なくされる事態から始まります。

永正2年（1505年）、養父の朝良が山内上杉家との抗争の結果として隠居し、朝興は家の主となりました。しかし、実際の権力は朝良の手中にあり、彼は実質的なリーダーシップを持つことができませんでした。それから13年後、永正15年（1518年）に朝良が亡くなると、ついに朝興は実権を握りましたが、その時には朝良の実子である藤王丸が生まれており、朝良は晩年に彼に家督を譲渡するように遺言を残していました。このため、朝興は藤王丸の後見人としての役割を果たすことになりました。

最初は足利義明や北条氏綱と同盟を結び、山内上杉家に対抗していましたが、大永3年（1523年）以降には北条氏綱との関係を距離を置き、山内上杉家との和平交渉に向けた動きへと転じました。大永4年（1524年）1月に、朝興は突如として山内上杉家の上杉憲房と和睦を結びました。しかし、その直後、彼の地元である江戸城が北条軍の攻撃を受け、朝興は戦いに身を投じます。彼の努力にもかかわらず、敗北を喫し、江戸城は北条軍によって奪われ、朝興は河越城へと退却しました。

翌年の大永5年（1525年）には、北条氏綱による攻撃を受け、彼の部下である太田資律は岩付城に追いやられます。この状況を受けて、朝興はかつての敵であった山内上杉家の上杉憲房、甲斐国の武田信虎、そして上総国の真里谷恕鑑との同盟を模索する必要がありました。8月には白子原の戦いで北条軍を破る快挙を遂げ、続いて大永6年（1526年）6月には蕨城を奪回しました。また、大永7年（1527年）には、江戸城の奪還を狙い、遠山直景の軍勢を破りました。

しかし、戦局が変わり、享禄3年（1530年）6月には小沢原の戦いで北条氏康に敗北しますが、その年の9月には岩付城を再奪回しています。天文元年（1532年）には藤王丸を殺害し、自らの子である朝定を正式に後継者にしました。この戦乱が続く時期において、彼は武田氏との連携を強化し、北条氏との抗争を続けました。最終的には江戸城奪回には至らなかったものの、彼の軍事的影響力は北条氏にとって脅威であり続けました。

そして、天文6年（1537年）4月27日、河越城において病によりこの世を去ります。享年50歳であり、彼の後を子の朝定が継ぐこととなります。上杉朝興の生涯は、戦国の動乱期における権力闘争と、その中での個々の家政権の維持について多くの教訓を示しています。

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