足利義明

足利義明とは

足利義明は、室町時代後期、戦国時代の武将であり、足利氏の一門です。第二代古河公方である足利政氏の子として生まれ、第三代古河公方足利高基の弟にあたります。彼は、古河公方家と対立し、「小弓公方」を自称したことで知られています。

生涯

義明は、幼少期に出家し、鶴岡八幡宮若宮別当の空然として僧侶の生活を送っていました。しかし、父・政氏と兄・高基が対立した永正の乱を機に還俗し、足利義明と名を改めます。その後、上総国真里谷城主の真里谷信清の支援を受け、下総国の小弓城を攻撃、占拠し、小弓公方を名乗り、古河公方と対立します。

従来、義明が小弓に移座したのは永正14年（1517年）とされていましたが、近年、永正15年（1518年）7月であることが明らかになりました。また、義明が東北地方を放浪していたという説は俗説であり、根拠がないことが判明しています。

さらに、義明の死後に築城されたと考えられていた生実城が、実は室町時代に遡ることが判明しました。そのため、義明が御所とした「小弓」は、この生実城ではないかという説も出ています。

真里谷氏との関係と対立

義明は、当初、真里谷信清の支援を受けていましたが、後に信清と対立し、真里谷氏の内紛に介入することになります。信清の死後、信隆を追放し、信応を当主としましたが、信隆は古河公方の高基とその子・晴氏、そして相模国の後北条氏と結び、義明と敵対しました。

第一次国府台合戦と壮絶な死

天文7年（1538年）、義明は軍勢を率いて下総国国府台に出陣し、後北条氏綱との間で激戦を繰り広げました。この戦いは第一次国府台合戦と呼ばれています。

義明は自ら陣頭に立ち、勇猛果敢に戦い、一時的に優勢を保ちましたが、里見義堯の消極的な姿勢が響き、次第に劣勢となります。弟の基頼や嫡男の義純が討ち死にする中、義明は氏綱軍に突撃し、壮絶な戦死を遂げました。

小弓公方滅亡とその後

義明の死によって小弓公方は滅亡しましたが、次男の足利頼純は、里見義堯や豊臣秀吉の庇護を受け、生き延びることができました。頼純の孫の代には、古河公方の後裔である足利氏姫と結婚し、喜連川氏と改姓しました。

江戸時代に入り、喜連川氏は江戸幕府から5000石の領地を与えられ、明治維新後には足利に復姓し、現在もその血筋は続いています。

研究論文

この記述を作成するにあたり、下記の論文を参考にしました。

佐藤博信「雪下殿御座所考―古河公方の政治基盤をめぐって―」『日本史研究』302号、1987年。
佐藤博信「小弓公方足利氏の成立と展開―特に房総諸領主との関係を中心に―」『歴史学研究』635号、1992年。
平田満男「足利基頼関係文書小考」『戦国史研究』7号、1984年。
黒田基樹「戦国期扇谷上杉氏の政治動向―朝良・朝興を中心として―」『千葉史学』24号、1994年。

これらの研究により、足利義明の生涯や小弓公方の成立過程について、詳細に知ることができます。

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