上林美穂

上林美穂（後に足立美穂と改名）は、1975年8月8日に愛知県で生まれた日本の女子レスリング選手です。主に1990年代に活躍し、輝かしい国際的な実績を残しました。桜丘高等学校を卒業後、東洋大学に進学。大学在学中に姓を上林から足立に改めています。

幼少期からレスリングと柔道に熱心に取り組み、柔道では将来オリンピック金メダリストとなる田村亮子（谷亮子）選手や、江崎史子選手といった国内トップクラスの選手との対戦経験も積んでいます。

中学に進むとレスリングに本格的に注力し始め、その才能が開花。1989年には中学在学ながら全日本女子選手権44kg級に初出場を果たしました。この大会の決勝で、この年の世界チャンピオンだった吉村祥子選手に敗れたものの、吉村選手から2ポイントを奪うという健闘を見せ、将来性を強く印象付けました。翌1990年には全日本女子オープンにおいて、前年の雪辱を果たし吉村選手から勝利を収め、初の国内タイトルを獲得しました。

高校進学後は、活動をレスリングに一本化。1991年には階級を47kg級に上げ、全日本選手権に出場。決勝で、後にプロレスラーとしても名を馳せる山本美憂選手と対戦し、5ポイントを奪うという粘り強い戦いを見せました。そして1992年、全日本選手権47kg級で悲願の初優勝を飾ります。この優勝により、同年の世界選手権に日本代表として初出場。世界選手権では、1回戦で敗れたものの、前回のチャンピオンであった鐘秀娥選手を破るなどの成績を残し、銅メダルを獲得。初めて世界の表彰台に立ち、その実力を証明しました。

大学入学前の1993年には、世界ジュニア選手権で優勝。ジュニア世代の頂点に立ちました。国内の大会では、後に女子プロレスで活躍する永島千佳世選手に対し、2戦連続でフォール勝ちを収めるなど、確かな実力を見せていました。

東洋大学に進学した1994年は、キャリアのハイライトとなる年でした。この年の世界選手権47kg級で、強豪選手が集まる中を見事に勝ち抜き、金メダルを獲得。世界チャンピオンの栄光を手に入れました。大学在学中の1995年から1996年にかけての時期に、登録名を足立美穂に変更しています。

足立美穂として活動を続けた後も、トップレベルでの活躍は衰えませんでした。1996年には全日本選手権で再び優勝。同年の世界選手権でも銅メダルを獲得しました。さらに1997年には、51kg級に階級を変更。この新しい階級でも強さを発揮し、全日本チャンピオンとなるとともに、その年の世界選手権でも銅メダルを獲得。異なる階級でも世界レベルで戦えることを証明しました。国内では、後に総合格闘技で活躍する辻結花選手とも対戦し、連勝を記録しています。

東洋大学を卒業すると同時に、一度現役選手としての活動を終えました。しかし、1999年に開催されたジャパンクイーンズカップにおいて、一度限りの引退からの復帰を果たしました。この復帰戦では2回戦を勝ち上がりましたが、3回戦で前年の世界チャンピオンであった篠村敦子選手にポイントを奪えず敗れ、この大会を最後に再び競技マットを離れました。

現役引退後も、女子レスリング界への貢献が認められています。2008年に東京で開催された世界選手権では、過去の功績が称えられ、歴代の世界チャンピオンの一人として特別表彰を受けました。上林（足立）美穂は、日本の女子レスリングが国際的な舞台で台頭し始めた時期を代表する選手であり、その多階級での活躍と世界選手権での複数メダルの獲得は、女子レスリングの発展に大きく寄与しました。

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