上海バンスキング

『上海バンスキング』

『上海バンスキング』は、斎藤憐の手による戯曲であり、昭和初期の中華民国、特に上海を舞台にした音楽劇です。この作品は1979年にオンシアター自由劇場により初演され、瞬く間に評価を受け、今では多くの舞台や映画に再演されています。

作品の背景と受賞歴

この戯曲は1979年、雑誌『新劇』の1980年3月号に発表されました。初演の成功により、1980年には岸田國士戯曲賞を受賞することになりました。また、オンシアター自由劇場は1979年の紀伊国屋演劇賞団体賞も受賞し、これにより作品は舞台芸術界での地位を確立することとなりました。

演出と音楽

物語は、ジャズの黎明期に活動した人々の恋と夢を描いています。音楽劇の特徴として、生バンドによる演奏があり、観客は舞台上で繰り広げられる演奏と物語の融合を楽しむことができます。特に主人公のキャラクターがモデルとしている大川幸一は、実在のクラリネット奏者であり、彼の音楽の影響が舞台全体に色濃く反映されています。

あらすじ

物語は1936年、日中戦争前の上海が舞台です。クラリネット奏者・波多野と彼の妻・まどかが、自由なジャズ音楽を求めて上海に辿り着きます。彼らは、トランペット奏者松本とともにクラブ「セントルイス」でのショーに参加することになります。物語は彼らの恋愛や友情、そして戦争による混乱を描写しており、物語の終息は希望とは裏腹に悲痛な結果となります。

登場人物

主要なキャラクターには、クラリネット奏者・波多野、彼の妻であるまどか、トランペット奏者・松本、クラブのオーナー・ラリーが登場します。彼らの運命が戦争に翻弄される様子は、劇的かつ感情的に描かれています。

演技と歌唱

実際に音楽を演奏するのは、プロのミュージシャンではなく、劇団員たちが自ら演奏できるレベルまで訓練されているのが独自の魅力です。特にメインキャストの吉田日出子は歌唱未経験でしたが、劇中で見せるパフォーマンスは観客に強い印象を与えました。

複数回の上演

『上海バンスキング』は、1980年から1984年にかけて数多くのロングラン公演が行われ、1990年代に入っても再演を重ねています。特に1990年から1994年には多くのステージで再演され、その累計回数は驚異的な435回に達しました。

映画化

本作は1984年と1988年に2度映画化されています。1984年版は深作欣二の監督で、上海での実際のロケーションを用いた制作がなされ、劇場公開時に高い評価を受けました。1988年版は串田和美が監督し、より舞台の雰囲気を映像化することに挑戦しました。

結びの言葉

『上海バンスキング』は、単なる音楽劇を超えた深い物語と、人々のリアルな感情を描いた作品です。時代を超えて愛されるこの作品は、日本のミュージカル界において特異な存在であり、ぜひ一度観賞してみる価値があります。

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