上海航天技術研究院

上海航天技術研究院（SAST）

上海航天技術研究院は、中国語では「上海航天技术研究院」と表記され、一般にはSASTという略称や、第八研究院、八院といった通称で知られています。中国の宇宙開発を担う巨大組織である中国航天科技集団公司（CASC）の主要な一員として、中国における宇宙技術の研究開発および製造を牽引しています。

この組織の起源は1961年8月に設立された「上海市第二機電工業局」に遡ります。上海市において、国の宇宙開発を担うための技術的な基盤として発足したこの組織は、その後、中国の宇宙開発の進展とともに体制を変化させ、1993年に現在の上海航天技術研究院という名称へと改称されました。長年にわたり、中国の宇宙技術の発展に貢献し続けている歴史ある機関と言えます。

SASTはその活動範囲が非常に広く、主に宇宙ロケット、人工衛星、そしてそれらを構成する多様な部品の設計、開発、そして製造までを一貫して行っています。約2万人規模の従業員を擁し、その年間予算は約17億元に達するとされており、中国の宇宙機関の中でも重要な位置を占めています。

これまでにSASTが関与してきたプロジェクトは多岐にわたります。人工衛星の分野では、気象観測を目的とした「風雲」シリーズや、地球観測や資源探査に用いられる「遥感」シリーズといった主要な衛星の開発に深く関与してきました。さらに、中国が国家的な重点プロジェクトとして進める月探査計画、「嫦娥計画」においても、探査機の開発などで重要な貢献を果たしています。

ロケット開発においては、中国の主力ロケットである長征（Long March）ファミリーの発展に不可欠な役割を担っています。特に、長征2号丁型（CZ-2D）や長征4号甲型（CZ-4A）などの派生型の開発においては中心的な役割を果たしました。これらのロケットは、様々な衛星を軌道に投入するために利用されており、中国の宇宙利用を支える基盤となっています。

SASTのロケット開発の歴史の中では、かつて運用されていた「風暴1号」（FB-1）ロケットの開発・製造も手掛けています。風暴1号は、主に軍事衛星の打ち上げを目的として開発され、実際に3機の軍事衛星を軌道に投入することに成功しました。しかし、このロケットは技術的な課題も多く抱えており、運用期間中に複数の失敗が発生しています。これらの失敗の詳細については公表されていませんが、度重なる問題に対し、SASTが一定の責任を負ったとも伝えられています。この経験は、その後のロケット開発における重要な教訓となったと考えられます。

現在、SASTはさらに先進的なロケットの開発にも積極的に取り組んでいます。特に、次世代の中型キャリアロケットである長征6号型（CZ-6）の開発を主導しており、環境に配慮した燃料を使用するなど、現代の宇宙開発の要求に応える技術開発を進めています。

このように、上海航天技術研究院は、設立から半世紀以上にわたり、中国の宇宙技術の研究開発、特にロケットと衛星の分野において中心的な役割を果たし続けています。過去の教訓を活かしつつ、新たな技術開発に取り組むことで、中国の将来の宇宙活動においても重要な貢献をしていくことが期待されています。

されています。

もう一度検索