上皇 (天皇退位特例法)

上皇 - 日本の新たな天皇の称号

上皇（じょうこう、英: emperor emeritus）は、退位した天皇に付与される称号であり、2019年に退位した第125代天皇明仁に初めて与えられました。この称号は天皇の退位を規定した「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」に基づき、退位後の明仁の称号として設定されました。

上皇の指定と敬称

明仁は2019年4月30日に退位し、その翌日、令和元年5月1日より上皇としての地位が確立されました。明仁に続く天皇として徳仁親王が即位し、上皇の称号が正式に使用されることとなりました。上皇に対する敬称は、退位前の天皇と同じく「陛下」とされています。宮内庁はこの称号の英語表記を「Emperor Emeritus」とし、「emeritus」はラテン語に由来し、「名誉を付与された退職者」という意味を持つことを説明しています。

海外の例との違い

海外では退位した君主に特別な称号が与えられる例が多く見受けられますが、日本の皇室においては退位の称号に関して特異な礼儀作法があります。特に、日本では「太上天皇」という称号も歴史的に用いられてきましたが、上皇の称号は公式に新設されたものであり、明仁の退位にあたって特例法で正式に決定されました。政府関係者により「日本の皇室ではふさわしくない」とされ、従来の「太上天皇」の使用は避けられました。

退位の経緯

明仁の退位の意向は、2016年の8月8日に発表されました。彼は日本国憲法における「天皇は国政に関する権能を有しない」という条文に従い、退位の具体的な制度については言及しませんでしたが、これが退位に関する議論のきっかけとなりました。日本政府は議論を重ね、明仁一代限りの退位を実現するための特例法を制定することに合意したのです。この「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」は2017年に国会を通過し、2019年の退位日が法的に定められました。

上皇と上皇后の称号

上皇の退位に際して、その配偶者となる女性に与えられる称号も新たに決定されました。彼女の称号は「上皇后」と称され、「陛下」という敬称が付けられます。明仁の皇后であった美智子はこのようにして上皇后となり、皇室史上初の事例となります。

妃の称号と名付けの意義

「上皇后」という称号は、配偶者の地位を反映しつつ、未亡人に対する印象を避ける目的で選ばれました。このため、皇室の歴史的背景を重視しないという観点からも新しい呼び名が必要とされ、上皇后の称号が新設された事情があります。これは、民間から皇室に入った美智子が皇族の一員として適応するための配慮でもありました。

生活の場と象徴

上皇・上皇後は、最初は皇居の「吹上仙洞[[御所]]」に住んでいましたが、後に「赤坂御用地」の「赤坂御所」に遷御しました。この遷御により、上皇の正式な住居が設定されたことになります。退位後の天皇の聖域が明確に設定される意義があります。

誕生日と祝日法

明仁の誕生日は12月23日でしたが、これは新たに即位した徳仁の誕生日である2月23日に移動されました。これにより、明仁の誕生日が祝日に該当しないため、二重権威の回避が図られています。これもまた、日本の皇室における特異な扱いの一例です。

上皇旗

退位にともない、新しい「上皇旗」が制定されました。この旗には、天皇旗に似た意匠が使われているものの、背景色が異なります。上皇と上皇后を象徴する旗が正式に使用されることで、彼らの存在はさらに明確となりました。

明仁上皇の退位は日本の歴史に新たなページを加えただけでなく、皇室の制度そのものを進化させる大きな出来事でした。これにより、皇室の在り方、称号の選定や、国内外における日本の皇室の位置付けが大きく変わっていくこととなります。

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