上知令

上知令について

上知令（あげちれい、じょうちれい）は、江戸幕府や藩によって発令された土地の没収命令であり、明治政府によっても土地没収令が行われました。この制度は、主に天保の改革（1841年-1843年）において水野忠邦が導入したことがよく知られています。

江戸幕府の上知令と蝦夷地の幕領化

江戸幕府は1799年に始まる一連の上知令を通じて、蝦夷地を幕領として管理しようとしました。特に1802年に実施された東蝦夷地の仮上知から始まり、その後1806年までにこの地域は完全に幕領となりました。さらに1807年から1821年までは、西蝦夷地や松前地も含まれ、蝦夷地の経営は幕府の重要な政策とされました。

この過程において、幕臣近藤重蔵が蝦夷地の幕領化を強く推進し、地政学的な理由からも必要とされた結果でした。1821年には松前藩に蝦夷地を再返還しましたが、日露和親条約により開港された後、新たに蝦夷地が幕府の管轄下に置かれたこともありました。

天保の改革と上知令

水野忠邦が中心となった天保の改革では、幕府の領地を一元的に管理し、江戸・大坂の十里四方を幕府の支配に置くための上知令が発布されました。これは外国船の出没が増える中、危機管理の一環として重要でした。具体的には、500石以上の大名には替え地が与えられる一方、500石以下の者には金銭が支給されるという内容でした。

しかし、この命令は多くの大名や旗本たちからの強い反発を受けました。彼らは、領地の替え地には莫大な経費がかかり、伝統的な価値観に照らし合わせて、領土を奪われることに対して大きな懸念を抱いたのです。特に、江戸近郊の大名・旗本たちは、代々の家柄としての領土の重要性を強く意識していました。

さらに、当時多くの大名が領民に借金を抱えており、上知令の施行によってその借金がどうなるかも不安視されていました。こうした状況に対して、反対派の動きは徐々に強まり、最終的には水野忠邦は孤立し、上知令は撤回されることになりました。この一連の流れは天保の改革の失敗とも言われています。

明治政府の上知令

明治時代に入ると1871年（明治4年）と1875年（明治8年）に再び上知令が発布されました。この時の上知令は、特に寺社領を没収することを目的としたもので、旧大名の所領が国有地へと変わる中での法的根拠を失った寺社領も同様に国有化されました。この動きは、地租改正によりすべての土地に地租を賦課する原則を打ち立てるためのものでした。

このように、上知令は江戸時代から明治時代にかけて、土地の管理や政治的な船出に大きな影響を与えた重要な命令であり、時代の変遷とともにその内容と背景も変化していったことを示しています。

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