上行寺 (横浜市)

上行寺について

上行寺（じょうぎょうじ）は、神奈川県横浜市金沢区六浦に位置する日蓮宗の寺院です。山号は六浦山で、ここは旧本山の中山法華経寺に由来しています。

歴史

上行寺は、日祐という僧侶によって開山され、六浦妙法が開基となった日蓮宗の寺院です。この寺院の設立以前は弘法大師によって創設された真言宗の金勝寺であったとされています。日蓮が下総より六浦津を経て鎌倉に向かう途中、船の上で千葉氏の武士・富木常忍を仏教に導いたことから、上行寺は「船中問答の霊場」と称されるようになりました。

南北朝時代の初期、六浦に住む豪族である六浦妙法が、自身の邸宅を寺院へと寄進し、日祐により開基されたのです。日祐が書写した日蓮の『観心本尊抄』の写本からも、いかにこの地が宗教的に重要であったかが伺えます。文和2年の刻銘が施された妙法の石塔が本堂の前に存在し、この頃に妙法が死去したと考えられています。

上行寺の什宝には、日祐が筆を執った康安元年の紙本墨書題目曼荼羅や、日祐が制作した応安3年の板曼荼羅があります。これらの文化財は横浜市に指定されており、特に板曼荼羅は鎌倉の外港で栄えた六浦における法華信徒の要求によって作られたため、日蓮宗の古い作例として貴重です。応安6年には、日祐によって「武州六浦上行寺」という寺号が設定され、多くの僧侶が参加して法華経を納めたことが記されています。

また、開基の六浦妙法は力強い伝説に縁があり、身延山にて強力な守護神として崇められています。彼は自身の財産を用いて、寺院に仏像を寄進し、地域の経済を支える役割も果たしました。

関東大震災の影響で、上行寺の本堂と祖師堂は倒壊しましたが、依然として日蓮宗中山門流の古刹として存在感を持っていました。また、上行寺の周辺には旧やぐら群があり、1984年には発掘調査によって多くの石塔と人骨が確認され、地元住民や研究者による保存運動が展開されましたが、マンション開発のため、多くの遺跡は消失してしまいました。

境内の特徴

上行寺は船着場に近いことから「舟繋ぎの松」の跡が残されています。この場所は宗教的な歴史だけでなく、地域文化の象徴ともなっています。

文化財

上行寺には多くの文化財が存続しており、日祐による題目曼荼羅や板曼荼羅、石造の宝篋印塔や木造の日蓮像が横浜市の有形文化財に指定されています。これらは上行寺の豊かな歴史を物語っており、地域にとっても重要な文化の礎となっています。

このように、上行寺は宗教的な意義だけでなく、歴史的な価値をも秘めている場所です。訪れる人々にその深い歴史と文化を伝えており、地域社会の中での重要な役割を果たし続けています。

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