上野山清貢

上野山清貢：北海道の風景と人々を描く画家

上野山清貢（1889年-1960年）は、北海道で生まれ、日本の近代洋画壇に貢献した画家です。彼の生涯は、北海道の自然と人々への深い愛情、そして芸術への飽くなき探究心によって彩られました。

北海道から東京へ：画家への道

江別村（現在の江別市）で生まれた上野山は、北海道師範学校図画専科を卒業後、小学校の代用教員として教鞭を執りながら、仲間とともに「エルム画会」を結成するなど、早くから画業への関心を抱いていました。1911年、画家を目指して上京。太平洋画会研究所で黒田清輝や岡田三郎助といった巨匠から薫陶を受け、画技を磨いていきます。

家庭と交友：多様な人間関係

1915年、作家として知られる素木しづと結婚しますが、1917年にしづを亡くすという悲しみを経験します。しかし、上野山は悲嘆にくれるだけでなく、関根正二や竹久夢二といった画家たち、そして谷崎潤一郎や久米正雄といった文人たちとの交流を深め、芸術家としての幅を広げていきました。1920年には再婚を果たしています。

帝展での活躍と画壇での地位

1924年、第15回帝展に「とかげを弄び夢見る島の小女」を出品し、初入選を果たします。その後、帝展で連続して特選を受賞するなど、画壇での地位を確立しました。1929年には武蔵野洋画研究所を開設し、後進の育成にも力を注ぎます。1930年には帝国美術院会員に選ばれ、その高い評価を決定づけました。

北海道の風景とアイヌ文化：主題へのこだわり

上野山の作品には、北海道の雄大な自然や、アイヌ文化が重要なモチーフとして多く見られます。彼は政治家・広田弘毅とも親交があり、その繋がりを通じて、北海道の風景を独自の視点で捉え、独自の表現で描き出しました。故郷への郷愁と、アイヌ文化への深い関心が、彼の作品に独特の深みを与えていると言えるでしょう。

戦後と晩年：新たな挑戦

戦後は日展に出品するなど、活動を続けました。1953年には北海道新聞社文化賞を受賞。晩年には、釧路で看板業を営む増田誠とともに世界一周旅行を計画しましたが、病気のため断念せざるを得ませんでした。増田はその後、上京し渡仏を果たすなど、上野山の影響を受けて活躍しました。

主な作品

上野山の作品は、北海道立近代美術館を始め、多くの美術館に所蔵されています。代表的な作品には「ムッシュOの肖像」「ヴァン・マリアとその息子」「ある夜」「室内」「硫黄山」「さけ」「裸婦」などがあり、それぞれに彼の画業の軌跡と表現方法の変化が見て取れます。

まとめ

上野山清貢は、北海道の豊かな自然と文化、そして人々との交流から生まれた数々の傑作を残しました。黒田清輝に師事した経歴、帝展での活躍、そして北海道の風景やアイヌ文化を描いた独特な作品群は、日本の近代洋画史において重要な位置を占めています。彼の生涯と作品は、私たちに北海道の美しさだけでなく、芸術家としての生き方についても多くの示唆を与えてくれます。

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