上野幌

上野幌（かみのっぽろ）は、札幌市厚別区の南東端に位置する地域です。南側および南西側では清田区の平岡公園東や平岡と境を接しています。また、上野幌の市街地から東へ進むと、厚別町上野幌と呼ばれる地区があり、そこは北広島市に隣接しています。この二つの地区は、住所表記の上では区別されますが、広義には一体の地域として認識されています。

歴史

上野幌の開拓は明治時代に遡ります。明治18年（1885年）、小ヶ口石松をはじめとする数戸の人々が入植し、この地の歴史が始まりました。

明治22年（1889年）には街道が開削され、広島方面から札幌へ向かう馬追いたちにとって重要な休憩地となり、次第に活気を見せるようになります。特に、札幌の歓楽街である薄野で活躍していた芸妓、立花（タチバナ）が駅逓所（郵便や宿泊、休憩などの機能を持つ施設）を兼ねた店を開いたことで、地区全体が彼女の名前から「立花」という通称で親しまれるほどに栄えました。この繁栄期は、千歳線が開通し、交通の要衝が移る大正7年（1918年）頃まで続きました。

大正時代に入ると、この地域は日本の酪農業においても重要な役割を果たします。大正13年（1924年）、日本の酪農の発展に大きく貢献した「日本酪農の父」こと宇都宮仙太郎と、その娘婿である出納陽一（すいとう よういち）が協力して宇納（うのう）牧場を開設しました。さらに昭和2年（1927年）、仙太郎の長男である宇都宮勤がアメリカから帰国し、宇納牧場を分割する形で宇都宮牧場を新たに興します。この時、宇納牧場の残りの部分は出納牧場として独立し、それぞれが地域の酪農を支える存在となりました。

しかし、高度経済成長期を経て札幌の都市化が進むにつれて、上野幌も住宅地としての開発が進みます。これに伴い、広大な土地を必要とする宇都宮牧場は、昭和50年（1975年）に環境の変化に対応するため、長沼町へと移転することになりました。

近年の変化としては、昭和62年（1987年）に住居表示が実施されたことが挙げられます。これにより、それまで「厚別町上野幌」として一括されていた市街地部分が、「上野幌1条1丁目」といったように、条丁目で区画された新しい町名に改められ、より明確な住所表記が導入されました。

現在の街並みと施設

現在の上野幌地区は、かつての開拓地や宿場町、酪農地としての歴史を背景に持ちつつ、新しい住宅地としての側面も併せ持っています。地区内には、住民の生活を支える様々な施設が立地しています。

教育機関：札幌市立上野幌中学校、札幌市立ノホロの丘小学校など、子どもたちが学ぶ場が整備されています。
公園・緑地：広大な敷地を持つ札幌厚別公園には、札幌厚別公園競技場や補助競技場が設置されており、各種スポーツイベントや市民のレクリエーションに利用されています。また、上野幌中央公園など、身近な緑地空間も点在しています。
産業・商業：雪印種苗本社・園芸センターのような、地域の特性を活かした施設も見られます。
その他：古くからの信仰の場である本誠寺もあります。

一方、東に位置する厚別町上野幌地区は、現在も広範な面積を占め、地域にとって重要な施設が集まっています。

交通：JR北海道上野幌駅が設けられており、札幌都心部や近隣の市町村へのアクセスを担う交通拠点となっています。
歴史・文化：地域の鎮守様として親しまれている上野幌神社が静かに佇んでいます。

上野幌は、開拓から宿場町、酪農、そして現代の住宅地へと変遷を遂げた、札幌の発展を物語る歴史を持つ地域です。過去の面影を残しつつ、新たな街づくりが進められています。

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