上野矗

上野矗（うえの ひとし）

上野矗（1937年9月26日 - 2022年6月13日）は、日本の著名な心理学者であり、大阪教育大学の名誉教授を務めた。

経歴

長野県長野市出身。東北大学文学部心理学科を卒業後、1967年に同大学院文学研究科心理学専攻博士課程を単位取得退学。その後、白梅学園短期大学講師を経て、1969年に弘前大学養護教諭養成所の助教授に就任。1973年、大阪教育大学助教授となり、1983年に教授に昇任。1992年には「病気との和解実現の方途を探って-体験学習におけるグループ受容体験をモデルとして」というテーマで久留米大学から医学博士号を取得。2003年に大阪教育大学を定年退官し、名誉教授となる。退官後は大阪樟蔭女子大学教授を務め、2008年に退職。長年にわたる心理学研究と教育への貢献が認められ、2017年秋の叙勲で瑞宝中綬章を受章。

研究内容と業績

上野矗は、特に臨床心理学、対人援助、そして病気との心理的側面に関する研究に力を注いだ。患者の心理的ケアや、カウンセリングにおけるコミュニケーションの重要性を説き、看護や医療現場における心理学的支援の発展に大きく貢献。体験学習を通じたグループでの受容体験を重視し、病気との和解を促す方法論を研究した。

著書

上野矗は、多数の著書を通じて、その研究成果と臨床経験を広く社会に伝えた。主な著書には、以下のようなものがある。

『話の聴ける看護婦になるために 対人・対話関係の技術』（医学書院、1978年）
『患者理解の臨床心理学-100項 実りある患者への援助的理解の実現』（日本総研出版、1981年）
『カウンセリングのすすめ方』（ぎょうせいヘルス・ライブラリー、1983年）
『看護臨床における話す・聴く ケアを実らせるポイントとその実際』（医学書院、1993年）
『患者に対する精神的援助に関する研究 現象学的方法による"病気との和解"の方途を探って』（風間書房、1994年）
『「私」の心理 日常生活に寄与できる心理学の視角』（風間書房、1999年）
『病床の臨床心理学』（フィリア、2006年）

これらの著書は、看護師やカウンセラーなどの対人援助職に携わる人々にとって、実践的な知識と技術を提供する貴重な資料となっている。

共編著・翻訳

上野矗は、単著以外にも、心理学に関する共編著や翻訳も手掛けている。早坂泰次郎との共著『心理学』（メヂカルフレンド社、1975年）や、清水増三との共著『自己変革と組織の活性化 CSTのすすめ』（有斐閣出版サービス、1986年）などがある。また、ヴァン・デン・ベルグの『病床の心理学』を早坂泰次郎と共訳し、日本の心理学界に紹介した。

受賞・叙勲

長年の教育・研究活動が評価され、2017年秋に瑞宝中綬章を受章。

人物

上野矗は、心理学の研究者としてだけでなく、教育者としても多くの学生を育成し、臨床心理学の発展に貢献した。その温厚な人柄と、患者や学生に対する真摯な態度は、多くの人々に感銘を与えた。

参考資料

幸せを築く対人援助 - 紀伊國屋書店BookWeb

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