下司昌一

下司 昌一（げし まさかず）氏は、1939年に生まれた日本の著名なカウンセラーであり、臨床心理士です。

氏のキャリアは教育者として始まりました。栃木県に生まれ、宇都宮大学学芸学部を卒業後、小学校や中学校の教壇に立ちました。その後、市教育委員会の指導主事として、教育行政の側面にも関わることとなります。

教育現場での経験を積む傍ら、下司氏はカウンセリングの重要性に着目し、上智大学の小林純一氏のもとでこの分野の研鑽を積みました。この学びが、その後の専門家としての道を大きく拓くことになります。

指導主事としての任期を終えた後、氏は教育現場に戻り、市立教育研究所の副所長、さらには小学校長を務めました。これらの管理職としての経験は、教育システム全体への深い理解と、学校が抱える様々な課題への洞察を深める上で貴重な機会となりました。その後、スクールカウンセラーとしても活動し、子どもたちや保護者、教職員との直接的な関わりの中で、心理的な支援の実際を担いました。

現場での豊富な経験に裏打ちされた専門性は、高等教育の場でも求められるようになります。明治学院大学心理学部の教授に就任し、未来の心理職やカウンセラーの育成に力を注ぎました。また、上智大学カウンセリング研究所の兼任所員としても、研究活動や専門的な指導に携わっています。

下司氏は、臨床心理士、認定カウンセラー・スーパーバイザー、特別支援教育士スーパーバイザーといった専門資格を保持しており、その専門性の高さがうかがえます。また、日本カウンセリング学会の理事や、同学会の認定カウンセラー会の会長を務めるなど、学会の中心的な立場から、カウンセリング分野の発展と専門性の向上に貢献してきました。

氏の知見と経験は、多くの著作としても結実しています。教育現場における相談活動やカウンセリングの実践に関するもの、また特別支援教育に関連する共編著が多く、その内容は実践的かつ具体的です。主な著作には以下のようなものがあります。

著書
『相談室ものがたり 親・子・教師との出会いから』 (日本文化科学社 日文選書, 1991年)
『カウンセラー日誌 教育相談室での出会いと別れ』 (金剛出版, 2008年)

共編著
『登校拒否がわかる本 教師と親のためのハンドブック』 (神保信一共編著, 日本文化科学社, 1995年)
『カウンセリングの展望 今,カウンセリングの専門性を問う』 (編集代表; 井上孝代, 田所摂寿編, ブレーン出版, 2005年)
『現場で役立つ特別支援教育ハンドブック』 (編集代表; 石隈利紀, 緒方明子, 柘植雅義, 服部美佳子, 宮本信也編, 日本文化科学社, 2005年)
『特別支援教育をどう進め、どう取り組むか 小・中学校の課題整理』 (砥ツカ敬三共編著, ぎょうせい, 2005年)
* 『特別支援教育の理論と実践 S.E.N.S.養成セミナー』 全3巻 (特別支援教育士資格認定協会 編; 上野一彦, 竹田契一共監修, 金剛出版, 2007年)

このように、下司昌一氏は、小学校教員から大学教授、スクールカウンセラーに至るまで、教育現場の多様な経験を基盤に、カウンセリングと特別支援教育という二つの重要な分野において、実践、研究、そして専門家の育成に多大な貢献をした人物と言えるでしょう。その業績は、多くの著作や学会活動を通じて、広く知られています。

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