下垂体炎

下垂体炎（かすいたいえん）

下垂体炎は、脳の下垂体に炎症が生じる稀な疾患です。その発症メカニズムはまだ完全には解明されていません。

症状と徴候

下垂体炎の症状は多岐に渡りますが、主に以下の4つのカテゴリーに分類できます。

頭痛と視覚障害: 妊娠をきっかけに発症することが多く、最も一般的な初期症状として頭痛や視覚障害が現れます。
下垂体前葉ホルモン機能の低下: 副腎皮質刺激ホルモン（ACTH）、プロラクチン、ゴナドトロピンといった下垂体前葉ホルモンの分泌が低下することで、様々な症状が現れます。
尿崩症: 尿が過剰に排出される尿崩症を発症し、強い口渇（多飲症）を伴うことがあります。
高プロラクチン血症: 血中のプロラクチン濃度が異常に高くなることがあります。

また、画像検査ではトルコ鞍に腫瘤が認められることが多いです。

診断

下垂体炎の診断は、他の疾患を除外して行う除外診断が中心となります。下垂体腺腫と誤診され、手術が行われるケースも少なくありません。MRI検査は、トルコ鞍内の腫瘤や病変の発見に有用であり、確定診断に繋がることがあります。

治療

治療法としては、以下のものが挙げられます。

ブロモクリプチン投与: 視野欠損やプロラクチンレベルの改善に効果が期待できます。
副腎皮質ステロイド投与: 下垂体の腫大を抑制し、周囲の組織への圧迫を軽減する効果があります。また、下垂体に対する自己免疫反応を抑制する作用も期待できます。

予後

下垂体炎の予後は患者によって異なり、以下の因子によって左右されます。

トルコ鞍内の腫瘤の大きさ
線維症の程度
* 副腎皮質ステロイドへの反応性

副腎皮質ステロイドによる治療で下垂体の腫大が改善されれば、視覚障害の回復が見込まれます。

歴史

下垂体炎が最初に報告されたのは1962年です。イギリスのGoudieとPinkertonによって、出産後に副腎機能不全で亡くなった22歳の女性の症例が報告されました。現在までに報告されている症例は100例程度と非常に稀であり、その多くが妊娠後期から出産直後の女性です。

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