下村彰男

下村 彰男（しもむら あきお）

日本の著名な森林学者、造園学者、そして観光学者として知られる。1955年兵庫県に生まれ。長年にわたり東京大学で教鞭を執り、現在は國學院大學観光まちづくり学部教授を務める傍ら、東京大学大学院名誉教授の称号を持つ。専門分野は森林科学を基盤とした造園学の中でも、特に自然環境と共存する観光・レクリエーション計画や、持続可能なリゾート開発計画に関する研究で国内外に影響を与えている。

経歴

下村彰男氏は、1978年に東京大学農学部林学科を卒業後、同大学院農学系研究科林学専門課程に進学し、1980年に修士課程を修了。博士課程を中途退学後、株式会社ラック計画研究所での実務経験を積んだ。1986年からは東京大学農学部助手として教育・研究の道に戻り、1993年には東京大学より博士（農学）の学位を取得。その後、同農学部助教授を経て、2001年には東京大学大学院農学生命科学研究科の教授に就任した。

東京大学では、森林科学専攻において森林資源環境科学講座・森林風致計画学研究室を率い、多くの後進を育成した。また、専攻長や附属演習林長など、大学内の要職も歴任し、教育・研究体制の整備に貢献した。この間、立教大学、日本大学、首都大学東京などで非常勤講師として景観論、風致計画学、自然・文化ツーリズム学などの講義を担当し、幅広い分野で知見を共有した。2020年に東京大学を定年退職後、2021年に國學院大學研究開発推進機構を経て、2022年から同大学観光まちづくり学部教授として新たな学部設立に尽力し、現在に至る。

研究と貢献

下村氏の主要な研究テーマは、森林や自然環境が持つ景観的価値やレクリエーション機能を科学的に評価し、それを基にした地域計画やリゾート計画のあり方を探求することにある。人と自然が調和する持続可能な観光地の創出を目指し、理論と実践の両面から研究を進めてきた。東京大学における研究室活動を通じて、この分野における学術基盤の確立に貢献した。

また、その専門知識を活かし、様々な公的委員会の委員として日本の環境政策や観光政策、都市計画、景観行政に関わってきた。特に、中央環境審議会委員や日本遺産審査委員会委員などを務め、国の重要な政策決定に深く関与した。学会活動では、日本造園学会の理事や会長を歴任するなど、関連分野の発展にも大きな役割を果たしている。

受賞歴

長年の功績に対し、多くの学会賞や表彰を受けている。主なものとして以下が挙げられる。

日本造園学会賞研究奨励賞（1989年）
日本造園学会賞（1996年）
日本公園緑地協会北村賞（2018年）
日本造園学会田村剛賞（2019年）
* 文化庁長官表彰（2020年）

これらの受賞は、その学術研究の質の高さと、社会への貢献が広く認められていることを示している。

主な著作

共著・分担執筆を中心に多数の書籍を刊行しており、その著作は専門分野の知見を広く伝える役割を果たしている。代表的なものには、『水辺の景観設計』、『造園を読む』、『フォレストスケープ』、『都市美―都市景観施策の源流とその展開』、『人と森の環境学』などがある。これらの著作は、学生や研究者だけでなく、実務家や一般読者にとっても、景観や環境、観光についての理解を深める上で重要な文献となっている。

下村彰男氏の研究活動と社会貢献は、日本の森林、造園、観光といった多岐にわたる分野の発展に寄与しており、今後もその影響力は続くと考えられる。

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