下街道 (善光寺道)

下街道（したかいどう）

下街道は、江戸時代に中山道と名古屋城下を結んだ脇往還で、善光寺道、釜戸筋、内津道、名古屋道、伊勢道などとも呼ばれました。中山道の大井宿と大湫宿の間の槙ヶ根追分から、釜戸、内津を経て名古屋城下の伝馬町札の辻まで、土岐川（庄内川）の沿岸を通る全長15里（約60km）の街道です。現在の国道19号に相当するルートを辿ります。

歴史

下街道は、日本武尊が東征の帰りに通ったという伝説が残るほど、古い歴史を持つ道です。土岐川は川底が浅く急流であったため水運が発達せず、代わりに陸路としての下街道が重要な役割を果たしました。

江戸時代

江戸時代には、中山道と上街道を経由するルートが公式の道とされ、下街道の利用は禁じられていました。これは、五街道である中山道の宿場を保護するための措置でした。しかし、中山道・上街道ルートは山道を通るため19里もかかりましたが、下街道は川沿いの平坦な道で15里と短く、多くの荷物や旅人が利用しました。

特に、名古屋方面からの御嶽参りや善光寺参り、木曽方面からの伊勢参りなどの利用者が多く、善光寺道や伊勢道としても知られていました。公式には宿場は設けられませんでしたが、多くの集落が宿場や立場の役割を果たしていました。

近代・現代

明治時代に入り規制がなくなると、下街道は名古屋と信州を結ぶ主要な交通路となりました。東京と西日本を結ぶ国土幹線交通路は東海道沿いに整備されましたが、下街道は中京地方と信州を結ぶ地域内交通路として重要な役割を担い続けました。

明治期の中山道の付け替えでは、大井-山野内間は下街道ルートが採用され、戦後の国道19号は名古屋から下街道、木曽路、善光寺西街道を経由して長野市へと向かうルートとなりました。このルートは、名古屋と善光寺を結ぶ交通路としての意味合いが強く、「近畿と関東を結ぶ東西交通路としての中山道」という概念は薄れていきました。

さらに、名古屋の経済的な影響力が強まると、下街道沿いに主要な交通インフラが整備されました。JR中央本線や中央自動車道も下街道ルートが採用され、中央リニア新幹線も名古屋・中津川間については下街道およびその延長沿いに建設される予定です。

旧・下街道の道筋は、現在では岐阜県道421号武並土岐多治見線、岐阜県道352号大西瑞浪線、愛知県道508号内津勝川線として一部が残っています。

主要な地名

下街道は、公式には宿場が設けられませんでしたが、宿場や立場の役割を果たしていた主な地名は以下の通りです。

（上街道）札の辻（名古屋市中区）
大曽根口（名古屋市東区）
勝川（春日井市）
鳥居松（春日井市）
和泉（春日井市）
坂下御殿
内津（春日井市）
池田（多治見市）
多治見（多治見市）
高山（土岐市）
土岐（瑞浪市）
釜戸（瑞浪市）
竹折（恵那市）
中山道 槙ヶ根追分（恵那市）
中山道 大井宿（恵那市）

※ これ以外にも宿泊や休憩ができた集落があり、街道の区切り方には諸説あります。

ギャラリー

（画像は省略）

脚注

関連項目

清河八郎「西遊草」：安政2年に清河八郎が下街道を利用し、竹折村や坂下宿に宿泊した記録があります。
上街道
下街道（曖昧さ回避項目）
国道19号
岐阜県道421号武並土岐多治見線
岐阜県道352号大西瑞浪線
愛知県道508号内津勝川線

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