下関市立水族館

下関市立水族館

下関市立水族館は、山口県下関市長府に位置していた市営の水族館です。1956年（昭和31年）に開館し、長年にわたり市民や観光客に親しまれてきました。この水族館は、ただの展示施設ではなく、日本の水族館史においても重要な役割を果たしました。

特徴

開館当初から、下関市立水族館は様々な特徴を持っていました。

企業からの寄贈: クジラを模した展示施設「鯨館」やエンペラーペンギンなどの動物は、地元に拠点を置いていた大洋漁業（現在のマルハニチロ）からの寄贈によるものでした。これは、地域社会と企業が協力して文化施設を支えるという、当時としては先進的な取り組みでした。
日本初のイルカショー: この水族館は、日本で初めてイルカショーを開催した水族館として知られています。イルカショーは、当時の人々にとって非常に珍しく、大きな話題となりました。
* 皇室の訪問: 1958年（昭和33年）には、昭和天皇・皇后が来館されました。これは、水族館が社会的に重要な施設として認識されていたことを示す出来事です。

歴史

下関市立水族館は、開館から1998年末までに約1700万人の来場者数を記録しました。しかし、施設の老朽化が進み、1999年（平成11年）には唐戸地区に新水族館（海響館）を建設し、移転することが計画されました。

しかし、1999年9月24日に山口県を襲った台風18号によって、水族館は大きな被害を受けました。強風と高潮により施設全体が浸水し、電気設備が故障。水の循環が停止したことで、飼育されていた魚の約80%が死滅し、残った魚も飼育困難となりました。復旧は断念され、生き残った魚は自然界に放流されたり、近隣の宮島水族館に譲渡されました。

この時点で、旧水族館は事実上閉館となりました。海響館の開館を待たずして、その役割を終えたのです。しかし、翌2000年（平成12年）4月15日に正式に閉館し、その後は12月3日まで見学希望者への無料公開が行われました。

海響館は2001年（平成13年）4月1日に開館しましたが、旧水族館から移された魚は一部にとどまりました。旧水族館の歴史は、新しい水族館に引き継がれることはありませんでした。

悲劇と希望

台風の被害では、飼育されていたゴマフアザラシの雌雄2頭も流失しました。雄の「ハツオ」と雌の「マル」は行方不明になりましたが、6日後、「マル」は下関市内の岸壁で無事保護されました。「帰ってきたアザラシ」として、この出来事は大きな話題となりました。

現在

現在、下関市立水族館の跡地には、関見台公園（櫛崎城跡）に鯨館のみが残されています。ただし、館内に入ることはできません。鯨館の近くには、台風で亡くなった魚たちの慰霊碑が建てられており、かつての水族館の存在を静かに伝えています。

関連施設

下関市立水族館の隣には、遊園地「マリンランド」がありました。しかし、マリンランドも水族館と同様に台風の被害を受け、ホテルなど一部を除いて閉鎖されました。

まとめ

下関市立水族館は、その短い歴史の中で、多くの人々に愛され、また、日本における水族館の歴史を語る上で欠かせない存在でした。開館から閉館まで、さまざまな出来事がありましたが、その記憶は今も人々の心の中に残っています。

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