下館シネマ1

下館シネマ1は、かつて茨城県筑西市（旧下館市）の田中町付近に位置していた映画館です。多くの人々に親しまれたこの名前は1985年に変更されてからのもので、それ以前は下館第一劇場として知られていました。かつては旧下館市の中心市街地にあり、地域において「映画の街」としての文化を象徴する重要なランドマークでした。時代の変化と共にその歴史に幕を下ろしましたが、閉館後も映画やドラマなどの映像作品のロケーション撮影地として活用され、その存在感を示し続けました。しかし、建物の老朽化が進んだことなどにより、2023年に解体される方針が報じられ、翌2024年には完全に姿を消すこととなりました。

歴史

この映画館の起源は、下館第一劇場として1956年 12月17日に茨城県から正式な興行許可を得たことに始まります。開館当初は、当時の著名な女優である若尾文子が迎えられ、盛大に開業を祝いました。下館第一劇場が開館する以前、下館市内には1941年に開館した下館映画劇場、1947年開館の下館中央映画劇場、そして1949年開館の下館文化映画劇場の、合計3館のみしか映画館は存在していませんでした。第一劇場の誕生は、市内の映画文化に新たな活気をもたらしたと言えます。

その後、下館市内の映画館を取り巻く環境は変化していきます。1977年7月30日には、既存の下館映画劇場が再建され、下館映画劇場と下館ミラノ座という2つのスクリーンを持つ複合的な施設へとリニューアルされました。1980年の時点では、引き続き下館第一劇場という名前が使われていましたが、1985年に創業者の孫夫妻が経営を引き継いだことを機に、「下館シネマ1」へと名称が改められました。この頃には、下館映画劇場を擁するビル内に、下館オスカーという新しいスクリーンが開設されており、これらの下館映画劇場、ミラノ座、オスカーを総称して「下館シネマズシアター」と呼ぶようになります。下館シネマズシアターは、下館シネマ1から道路を挟んで北西の斜め向かいに位置していました。

下館シネマ1に改称されて間もない1985年 12月7日には、後に歴史的なヒット作となる映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が公開されました。この成功を皮切りに、『トップガン』、『スタンド・バイ・ミー』、『ジュラシック・パーク』、そして特に世界的な大ヒットとなった『タイタニック』など、話題の洋画作品が多数上映され、多くの映画ファンが詰めかけました。特に『タイタニック』公開時には、映画館前の歩道に長い行列ができるほどの熱狂的な賑わいを見せました。

しかし、時代はシネマコンプレックスの到来という大きな波を迎えます。茨城県内や近隣の栃木県内に大型のシネマコンプレックスが相次いでオープンし、下館シネマ1はこれらの新しい形態の映画館との厳しい競合に直面するようになります。その影響で、徐々に客足は減少し、集客は困難となっていきました。その結果、筑西市が誕生してから約9ヶ月後の2005年 12月、下館シネマ1はその約半世紀にわたる歴史に幕を閉じました。また、道路を挟んで存在した下館シネマズシアターも、その翌年である2006年には営業を終了しました。これにより、かつての旧下館市域からは、従来の形態を持つ映画館が全て姿を消すこととなりました。

閉館後と解体

閉館した後も、下館シネマ1の建物はすぐに取り壊されることなく、その独特の雰囲気は残されました。この場所は、映像制作者たちの目に留まり、映画やテレビドラマのロケーション撮影地として再び活用されることになります。具体的には、2007年にはオムニバス映画『ユメ十夜』や原田眞人監督による映画『魍魎の匣』の舞台となりました。また、2008年には三谷幸喜監督のコメディ映画『ザ・マジックアワー』の主要なロケ地の一つとして使用されたほか、同年には読売新聞のテレビCM撮影にも使われました。さらに、2019年にはフジテレビ系列で放送されたドラマ『トレース〜科捜研の男〜』の撮影もここで行われました。

しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、撮影場所としての利用機会が減少したことや、建物の経年劣化が著しく進んだことから、維持管理が難しくなりました。このため、2023年には建物の解体計画が報じられ、実際に2024年4月から7月にかけて解体工事が実施されました。かつて地域の人々に映画を通じた夢や感動を与え、また閉館後も映像作品の一部としてその姿を残した下館シネマ1の建物は完全に撤去され、現在は更地となっています。

下館シネマ1が位置していた場所は、地域の映画文化の歴史や、閉館後もなお映像作品を通じて多くの人々の記憶に残る存在であったことの証として、静かに佇んでいます。

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