不動産証券化協会

一般社団法人不動産証券化協会（ARES）は、日本の不動産証券化市場の発展と健全化を目的として活動する公益法人です。英語名はThe Association for Real Estate Securitizationといい、略称としてARES（エイリス）の名称が広く知られています。設立の根幹にあるのは、不動産証券化商品の社会的信頼性を高め、投資家を適切に保護することです。この目的達成のため、多岐にわたる活動を展開しています。

その活動内容は主に五つの柱から成り立っています。第一に、不動産証券化および関連商品に関する広範な調査研究を行い、市場の動向や課題を深く分析しています。第二に、これらの調査研究を通じて得られた知見に基づき、関係省庁や業界団体などに対して様々な提言や意見具申を行うことで、市場を取り巻く制度や環境の改善に積極的に関与しています。第三に、協会の正会員である企業に対して、法令遵守や商品販売の適正化、さらには投資家保護に関する必要な指導や勧告を実施し、業界全体の規範意識向上を図っています。第四に、会員企業の行う不動産証券化業務に関連して投資家から寄せられる苦情に対し、その解決を支援する体制を整えています。そして第五に、一般投資家や広く社会に対して、不動産証券化に関する正確な情報提供や知識の普及活動、広報活動を展開し、市場への理解促進と透明性の向上に努めています。

不動産証券化協会の沿革は、1988年（昭和63年）12月に発足した「不動産証券化研究会」に遡ります。その後、1990年（平成2年）9月に不動産シンジケーション協議会（CRES）が設立され、不動産証券化に関する議論と活動が本格化しました。これらの流れを受け、2002年（平成14年）12月には社団法人不動産証券化協会が設立され、組織的な活動の基盤が確立されました。協会の設立後も市場環境の変化に対応した取り組みが進められ、2006年（平成18年）4月には、不動産証券化分野の専門家育成を目的とした「不動産証券化協会認定マスター」資格制度が創設されました。2011年（平成23年）4月には、公益法人制度改革への対応として、一般社団法人への移行を果たしました。同年6月には、会報誌「不動産証券化ジャーナル」を発刊するなど、情報発信の強化も図られています。

協会の組織体制においては、会長および複数の副会長が置かれており、いずれも非常勤の役職となっています。これらの役員は、三菱地所、丸紅、東急不動産、三井不動産、三井住友信託銀行、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ、野村證券といった、日本の主要な不動産会社や金融機関、総合商社の経営層から選出されており、協会の活動が業界全体を代表するものであることを示しています。

正会員は、不動産会社、総合商社、不動産投資顧問会社（アセットマネジメント会社やREITの資産運用会社）、金融機関（銀行、証券会社、信託銀行など）といった、不動産証券化市場に深く関わる幅広い業種の企業で構成されています。2021年1月現在で全119社が正会員として参加しており、市場の主要プレイヤーの多くが協会のメンバーとなっています。これらの会員企業の活動を通じて、協会は日本の不動産証券化市場の健全な発展と信頼性向上に重要な役割を果たしています。

不動産証券化協会が取り組む分野は、REIT（不動産投資信託）や私募リートなど、多様な不動産証券化商品と密接に関連しています。協会の活動は、これらの商品の透明性を高め、投資家が安心して投資できる環境を整備することに貢献しており、不動産証券化市場全体の持続可能な成長を支える基盤となっています。

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