不条理日記

『不条理日記』とは

吾妻ひでおによる漫画作品『不条理日記』は、不条理ギャグ漫画のルーツとも言える作品です。1978年12月に『別冊奇想天外』で最初の作品が発表され、その後、自販機本『劇画アリス』で連載されました。2006年には『COMICリュウ』創刊号に新作「不条理日記2006」が掲載されるなど、長年にわたり読者に愛され続けています。

作品の特徴

『不条理日記』は、SFや漫画のパロディをベースにした、短編の不条理ギャグを日記のように並べた構成が特徴です。その独特な世界観とユーモアは、多くの読者を魅了し、後の漫画家たちにも大きな影響を与えました。1979年には、第10回星雲賞コミック部門を受賞し、当時の吾妻ひでおブームを牽引する作品となりました。また、2000年にはNHKの番組「BSマンガ夜話」でも取り上げられ、改めて注目を集めました。

初出一覧

立志篇: 別冊奇想天外 No.6 SF漫画大全集 Part2（奇想天外社、1978年12月）
しっぷーどとー篇: 劇画アリス（アリス出版、1979年5月）
回転篇: 劇画アリス（アリス出版、1979年6月）
帰還篇: 劇画アリス（アリス出版、1979年7月）
永遠篇: 劇画アリス（アリス出版、1979年8月）
転生篇: 劇画アリス（アリス出版、1979年9月）
SF大会篇: 奇想天外（奇想天外社、1979年11月）
不条理日記2006: COMICリュウ（徳間書店、2006年11月）

収録単行本

パラレル狂室: 奇想天外コミックス（奇想天外社、1979年6月）※「立志篇」のみ収録
不条理日記: 奇想天外コミックス（奇想天外社、1979年12月）
天界の宴: アクションコミックスHideo Collection 4（双葉社、1985年2月）※「SF大会篇」を除く
陽はまた昇る: アクションコミックスHideo Collection 6（双葉社、1985年4月）※「SF大会篇」のみ
定本不条理日記: 太田COMICS―芸術漫画叢書（太田出版、1993年3月）
アズマニア2: ハヤカワコミック文庫（早川書房、1996年5月）
ぶらっとバニー 完全版 1: リュウコミックス（徳間書店、2008年1月）※「不条理日記2006」収録
不条理日記 完全版（復刊ドットコム、2019年9月）

『へろ』を巡る虚実

『不条理日記』に登場する「SF大会篇」は、吾妻が星雲賞を受賞した1979年の第10回日本SF大会を題材にしたレポート漫画です。この中で、SF大会のオークションに、架空の書物「スタージョンの『にふへんへほう』」「ベーホの『ふるむまかをめら』」「クルムヘトロジャンの『へろ』」が登場します。

特に『へろ』は、その後の展開で現実世界に影響を与えました。1980年の第11回日本SF大会では、『不条理日記』のシーンを再現する企画が持ち上がり、『へろ』が「ウロン文学選集」という設定で実際に制作されたのです。装幀は国書刊行会の叢書を模し、吾妻ひでおがイラストを担当、矢野徹が序文を執筆するなど、豪華なメンバーが参加しました。この書籍は限定300部で発行され、一部は特別限定版として革装で制作されました。

さらに翌1981年には、短編集『ふるむまかをめら』も制作され、こちらも話題を呼びました。

吾妻の没後、2020年5月には『復刻版 ウロン文学選集』が復刊ドットコムから限定版として刊行され、再び注目を集めました。

このように、『不条理日記』は、漫画の世界を超え、現実世界にも影響を与えた特異な作品として、今もなお多くのファンに愛され続けています。

また、とり・みきの漫画『るんるんカンパニー』には、クルムヘトロジャンの小説を翻訳する場面が登場するなど、吾妻作品の影響が他の作家にも及んでいることが伺えます。

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