自販機本

自販機本とは

自販機本とは、1970年代中頃から1980年代中頃にかけて日本で自動販売機を通じて販売された成人向け雑誌のことを指します。一般的には「ビニ本」とも呼ばれるこの雑誌は、当時の日本におけるエロメディアの中心的存在となり、その後のエロ文化の形成に大きな影響を与えました。

概要

自販機本は、1970年代を代表する成人向け雑誌で、特に自動販売機での販売に特化した形態を持ちます。製本や配本の理由から、A4判より小さなB5サイズが一般的で、内容は64ページ程度が主流でした。ヌードグラビアと記事が主な構成要素とされ、書店では全く販売されない特殊な流通経路を持っていました。そのため、販売員と直接会わずに購入できるという利点が授けられ、一部のヌードモデルの露出も重なり、特に人気を誇りました。

このジャンルの起源は1968年に遡り、1975年に東京雑誌販売が自販機専用の流通に進出しました。その後、1976年には自販機専門の卸売企業が設立され、自販機本の流通が短期間で確立していきました。1980年の最大発行部数は想定で165万部から450万部とも言われ、月刊の発行誌数は43に達するなど、当時のエロ文化において一大勢力を誇っていました。

特に多くの自販機が日本全国に設置され、500億円規模の市場を形成し、「現金回収車のショックアブソーバーが百円玉の重みで壊れた」といった都市伝説まで生まれるほどの盛況でした。さらに、印刷所での雑失誤や編集者同士の面白エピソードも多く見受けられました。自販機本はその特異な流通形態ゆえ、発行から販売までのサイクルが極めて短く、新作がリリースされるいたるところで注目を集めていました。

自販機本の特徴

以下の点が自販機本の特徴として挙げられます：

• - 性行為の描写が擬似的であり、過激さは控えめだった。
• - ヌードグラビアはカラーが前半に収められ、後半は文章が主体。紙質も一般的には粗悪。
• - 発行年月や版元の名称が記載されていない場合が多く、版元が実在しないことも。
• - セーラー服の掲載が禁止されており、流通経路が特異であったために、逆に売上を伸ばす要因になっていました。表紙には一般向けのソフトなデザインが求められ、商品の裏側にはより過激なタイトルがつけられたことも特徴的です。

自販機本の衰退

1980年代に入ると、自販機本は次第に衰退の一途を辿りました。特に新たに現れたビニール本の普及により、より過激な表現が求められるようになったことが拍車をかけました。さらに、未成年者による利用や売上の不透明さが問題視され、PTAや警察の規制が強化されていきました。1980年には、全国規模で有害図書規制の請願が国会に提出され、ついには自販機本は1980年代中頃に絶滅に至りました。このような事情から、現在自動販売機で見かけるエロ本は、従来の自販機本とは異なる形態のものとなっています。

文化的な意義

自販機本は、ただのエロメディア以上の役割を果たしました。特に「Jam」や「HEAVEN」といった雑誌は、エロというテーマを超えて当時のカウンターカルチャーを反映した内容であったため、サブカルチャーの先駆けと見なされています。これらの本は、パンク文化やアングラな芸術運動とも結びつき、若者文化の一部を形成していました。多くの著名な作家や編集者が参与し、彼らの独自の視点が雑誌を特徴づける要因ともなりました。

自販機本は、日本におけるエロ文化の変革と進化において重要な位置を占め、その時代背景や流行り、考え方を色濃く反映しています。冷戦の緊張が緩和され、自由な表現が求められた時代に花開いた独創的な文化の一端を担った自販機本は、今でも多くの人々にその影響を与え続けています。

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