劇画アリス

『劇画アリス』とは



『劇画アリス』は、アリス出版が1977年から1980年にかけて発行していた自動販売機専門の劇画誌です。当時、「三流劇画」と呼ばれたジャンルに属し、その中でも特に異彩を放つ存在でした。同誌は、「東日販を通している漫画誌にはない自販機独自の漫画誌」というコンセプトのもと、編集長の亀和田武によって創刊されました。

概要



『劇画アリス』は、三流劇画ブーム時に『漫画エロジェニカ』、『漫画大快楽』と並び「三大エロ劇画誌」の一つとされました。これらの雑誌を「三流エロ劇画御三家」と呼ぶのは、編集長の亀和田武が考案したもので、1978年10月号の『本の雑誌』のコラムで初めて言及されました。

この雑誌は、単なるエロティックな表現だけでなく、マニアックな漫画の発表の場として機能しました。また、亀和田編集長は、誌面で学生運動風のアジテーションを繰り返し、エロ劇画誌にゲリラ性と独自のキャラクターを与え、ムーブメントの到来を予感させました。

掲載作品は、吾妻ひでおの『不条理日記』や坂口尚の『闇の箱』などの連載作品を除き、多くが短編作品でした。単行本はアリス出版から発行されず、他の出版社から発行された作品集に収録されることが多くなっています。

表紙絵は、創刊当初は辰巳四郎が、その後は角田純男が終刊まで担当しました。

1980年5月号をもって休刊となり、最終号では井上英樹の『黄昏は始まったばかりだけど』を巻頭に、奥平衣良、近藤ようこ、清水おさむ、吾妻ひでお、森田じみい、坂口尚、加藤カズオ、まついなつき、飯田耕一郎、田口智朗、米沢嘉博らが寄稿し、宮西計三の「さようなら」のネームが最後のページを飾りました。

主な執筆作家



『劇画アリス』には、多くの才能ある作家たちが参加しました。吾妻ひでお、坂口尚といった後の漫画界を代表する作家の初期作品が掲載されたことは特筆すべき点です。また、井上英樹、田口智朗、清水おさむ、近藤ようこなど、個性的な作風を持つ作家たちの作品も、この雑誌で発表されました。

その他、飯田耕一郎、高信太郎、高井研一郎、玄海つとむ、あがた有為、宮西計三、森田じみい、まついなつき、奥平衣良など、多彩な作家たちが参加しました。

掲載情報



以下に、『劇画アリス』の主な掲載情報を記載します。奥付が無表記のため、発行年月日が不明な号が多いのが特徴です。

  • - 創刊号「自動販売機でなぜ悪い!」（1977/9/8）
- 『SOUP・X』増刊号として創刊。編集：亀和田武、表紙：辰巳四郎

  • - 通巻2号「爆発するセックス エロがしたたる!!」（1977/??/??）
- この号から劇画専門誌となる。編集：亀和田武

  • - 通巻3号「本屋で買うよりも自動販売機で買う方がNOWだと思うのです。僕たちは。アリス出版」（1977/??/??）
- 編集：亀和田武

  • - 通巻4号/A-4（1978/??/??）

  • - 通巻5号/A-5「あんた本当に今の生活に満足しているかい…??」（1978/??/??）
- 編集：亀和田武

  • - 通巻6号/A-6「欲情の国に迷いこんだアリスは今どうしているか…!!」（1978/??/??）
- 編集：亀和田武

  • - 通巻7号/A-7「生身の女より劇画の女のほうがよっぽど欲情するぜ!!」（1978/??/??）
- 編集：亀和田武、表紙：原神一

  • - 通巻8号/A-8「肉の修羅まだ知らぬ少女アリスは15歳の夏に何を体験した…!!」（1978/??/??）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻9号/A-9「死んでもいい…快楽の淵でそう思った少女アリスはまだ15歳」（1978/??/??）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻10号/A-10「白け? そんなものナオンとコオマン一発きめれば吹っとぶぜ!」（1978/??/??）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻11号/A-11「フィーバーするのは土日の夜だけ、なんて言いっこなしだぜ!」（1978/??/??）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻12号/A-12「上手で美しい劇画!? 要は迫力だぜ、糞ったれめ!!」（1978/10/??）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻13号/A-1「不確実性の時代? 冗談じゃねえ、確かなエロがここにあるぜ!!」（1978/??/??）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻14号/A-2／気合いと品性──これがエロ劇画の生命さ（1978/12/6）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻15号/A-3「立たせる劇画誌──アリスはエロ劇画の王道を行く」（1979/??/??）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻16号/A-4「性の地獄を彷徨う少女アリスたちは今…!!」（1979/??/??）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻17号/A-5「いま劇画の生々しい魅力がアリスと共に蘇った!!」（1979/3/29）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻18号/A-6「少女のエロスが世界秩序の解体を告知する!!」（1979/4/26）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻19号/A-7「少女が夢みる時 世界がエロチックに痙攣する!!」（1979/5/28）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻20号/A-8「少女の股間は全世界を映しだす鏡である!」（1979/6/29）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻21号/A-9「ここまで来た。劇画の荒野に曙光は見えたのか…!」（1979/??/??）
- 編集：亀和田武、表紙：角田純男

  • - 通巻22号/A-10「吹きあれるエロスの嵐!! 今 Alice Bombsは作動を開始した!」（1979/??/??）
- 編集：迷宮'79、表紙：角田純男

  • - 通巻23号/A-11「淫らな唇に誘われて、今、淫夢が忍び込む!!」（1979/??/??）
- 編集：迷宮'79、表紙：角田純男

  • - 通巻24号/A-12「79年劇画状況 最後の総決算!! 見よ!!地平は切り開かれた!!」（1979/12/??）
- 編集：迷宮'79、表紙：角田純男

  • - 通巻25号/A-1「燃えたつ肉の匂いに世界は妄想へとすべり込む!!」（1980/??/??）
- 編集：迷宮'80、表紙：角田純男

  • - 通巻26号/A-2「炎の火の玉劇画!! 今、すべてのシーンをつきぬける」（1980/??/??）
- 編集：迷宮'80、表紙：角田純男

  • - 通巻27号/A-3「80年代エロチックシーンはこれできまりだ!!」（1980/??/??）
- 編集：迷宮'80、表紙：角田純男

  • - 通巻28号/A-4「劇画解体の予兆が聞こえる! 明日はアリスのものだ!!」（1980/??/??）
- 編集：迷宮'80、表紙：角田純男

  • - 通巻29号/A-5「ミス・ザ・スタート, ミス・ジ・エンド!?」（1980/5/??）
- 編集：迷宮'80、表紙：角田純男

劇画アリス増刊



『劇画アリス』には、多数の増刊号も発行されました。これらの増刊号は、特定の作家の特集や、作品の再録などで構成されています。以下に主な増刊号を記載します。

  • - 玄海つとむ傑作選「有閑夫人日記 白い指の恍惚」1978/??/??
  • - 能條純一傑作選「天使の恍惚」1978/??/??
  • - やまもと孝二傑作選「痴漢体験」1978/??/??
  • - 千葉一郎特選集「暴行地帯」1978/??/??
  • - いかずち悠特選集「青い性」1978/??/??
  • - 清水おさむ特選集「放課後の少女」1978/??/??
  • - 清水おさむ傑作選集「欲情階級」1978/??/??
  • - いかずち悠の世界 1979/3/14
  • - 村祖俊一の令女界「美少女地獄」1979/??/??
  • - 吉田英一の世界「浅草情話 やさしい夜」1979/??/??
  • - 飯田耕一郎の世界 1979/??/??
  • - 飯田耕一郎 PARTⅡ「美宏の季節」1979/??/??
  • - 井上英樹の世界 PART1 197?/??/??
  • - 井上英樹の世界 PART2 1979/5/10
  • - 小多魔若史の世界 1979/6
  • - 中島史雄の世界 1979/??/??
  • - 宮西計三・つか絵夢子の世界 1979/??/??
  • - 田口智郎の世界 1979/11/??
  • - 小多魔若史の…おまんた音頭 1980/??/??
  • - 清水おさむ・吾妻ひでお他「悪徳堕天使」1980/??/?? 米沢嘉博編集

関連事項



『劇画アリス』に関連する事項として、以下のものが挙げられます。

  • - アリス出版：『劇画アリス』を発行していた出版社。
  • - 檸檬社：亀和田武が『劇画アリス』以前に初代編集長を務めた出版社。
  • - 亀和田武：『劇画アリス』の初代編集長。
  • - 米澤嘉博：『劇画アリス』の2代目編集長、漫画研究家。
  • - 吾妻ひでお：『劇画アリス』に連載を持っていた漫画家。
  • - 迷宮 - 劇画アリス編集部：2代目編集を担当した漫画批評集団。
  • - 少女アリス：『劇画アリス』の姉妹誌。
  • - 漫画大快楽：亀和田武が編集長を務めた三流劇画誌。
  • - 自販機本：自動販売機で販売される書籍。
  • - エロ劇画誌：エロティックな描写を含む劇画誌。
  • - サブカルチャー：主流文化とは異なる文化。

参考文献



  • - 亀和田武「総括」『劇画アリス』（アリス出版）通巻22号
  • - 米沢嘉博・川本耕次・青葉伊賀丸編『別冊新評 三流劇画の世界』1979年 新評社
  • - 米沢嘉博『戦後エロマンガ史』青林工藝舎 2010年4月
  • - 亀和田武『雑誌に育てられた少年』左右社 2018年11月

外部リンク



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