不機嫌な赤いバラ

『不機嫌な赤いバラ』

概要

1994年にアメリカで製作された映画『不機嫌な赤いバラ』（原題：Guarding Tess）は、予測不能な展開を交えながら、かつて国のファーストレディを務めた女性と、彼女の身辺警護官として派遣された若手男性との間に芽生える、独特な人間関係を描いた作品です。本作は、異なる立場と価値観を持つ二人が、最初は激しく反発し合いながらも、次第に互いの孤独や内面的な苦悩に触れることで理解を深め、やがて温かい絆を築いていく過程を、シュールコメディの要素を織り交ぜながら描き出します。

ストーリー

物語の主人公であるダグ・チェズウィックは、シークレットサービスに所属する意欲的な警護官です。彼は、より危険で責任の重い政府要人の警護任務を強く志望し、そのための配置転換を上層部に願い出ていました。しかし、彼の希望は叶えられることなく、思いがけない任務が命じられます。

その任務とは、公務から完全に身を引き、静かに暮らしている元大統領夫人のテス・カーライルの身辺警護でした。この異例の任務がダグに課せられた背景には、テス夫人が直接彼を指名したことがありました。そして、現職の大統領がテス夫人に大きな恩義を感じていたため、この指名を断ることができなかったのです。

輝かしいキャリアを夢見ていたダグにとって、退屈な隠居生活を送る夫人の世話係のような仕事は、全く張り合いのないものに感じられました。彼はこの現状に深い不満を抱き、その感情を隠すことなく、テス夫人に対してもぶっきらぼうな態度を取り続けます。

一方のテス夫人は、かつての多忙な日々から一転した現在の孤独や、亡き夫への思い、そして公的な生活では見せられなかった内面的な葛藤を抱えていました。彼女はダグの不満を見抜いており、時に彼の態度にいら立ち、感情的にあたり散らしたり、理不尽とも思える要求を繰り返したりします。このように、二人の間には常に険悪な空気が漂い、衝突が絶えませんでした。

しかし、反発しあいながらも同じ空間で時間を共有するうちに、ダグはテス夫人の表面的な気難しさの裏にある、深い寂しさや、彼女が経験してきた波乱万丈な人生の苦悩を知るようになります。また、テス夫人も、ダグの無愛想な態度の奥にある、警護官としての真面目さや、人間的な優しさに触れる機会を得ます。

互いの内面に触れることで、頑なだった二人の心の壁は次第に低くなっていきます。いがみ合っていた関係は、徐々に理解と信頼へと変化を遂げ、最終的には立場や世代を超えた、温かい絆が生まれていくのです。この映画は、表面的な印象や先入観にとらわれず、他者の内面と向き合うことの重要性を、ユーモアと感動を交えながら描いています。

制作スタッフ

本作のメガホンを取ったのはヒュー・ウィルソンです。彼はピーター・トロクヴェイと共に脚本も担当し、物語の骨子を作り上げました。製作はネッド・タネンとナンシー・グレアム・タネンが手掛け、視覚面ではブライアン・J・ライノルズが撮影監督として参加しています。音楽はマイケル・コンヴェルティーノが担当し、作品の雰囲気を彩りました。美術監督はピーター・S・ラーキン、編集はシド・レヴィン、そして衣装デザインはアン・ロスとスー・ギャンディが担当し、映画の世界観を構築しています。提供はシャネル・フィルムズとトライスター映画が行いました。

評価

批評家からの評価は分かれる結果となりました。主要なレビュー収集サイトであるRotten Tomatoesでは、34件のレビューに基づいて56パーセントの批評家が支持を示し、平均点は10点中5.70点でした。一方、Metacriticでは、14件の批評家による評価の加重平均値が100点中46点にとどまっています。これらの評価は、本作が批評家の間で一定の評価を得る一方で、普遍的な高い評価には至らなかったことを示唆しています。

日本語吹替版には、小野英昭や氷上恭子といった声優が参加しています。日本語版制作は東北新社が担当し、演出を高橋剛、翻訳を九鮎子、調整を熊倉亨、プロデュースを吉岡美惠子、制作担当を神部宗之、菊地由香がそれぞれ務めました。

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