不破内親王

不破内親王の生涯と伝承

不破内親王（ふわないしんのう）は、聖武天皇の皇女であり、母は県犬養広刀自です。彼女は同母姉の井上内親王と深い関係にありましたが、その生涯は多くの困難に満ちていました。

略歴

不破内親王は、新田部親王の子どもである塩焼王と結婚していますが、具体的な結婚の時期は定かではありません。一時、内親王の身分が剥奪されるという出来事がありました。これは聖武天皇の存命中に起こったとされ、父娘の関係が良好ではなかったためとも言われています。この出来事が、妹である井上内親王やその夫・白壁王との待遇差を生む一因となった可能性があります。

764年には、塩焼王が藤原仲麻呂の乱に参加し、命を落としています。幸いにも不破内親王とその息子・氷上志計志麻呂はこの事件による連座を免れました。

769年、県犬養姉女や新田部親王の娘と共に称徳天皇への呪詛を企てたことで、不破内親王は再度身分を剥奪され、厨真人厨女（くりやのまひとくりやめ）に改名され、平城京から追放されました。当時、志計志麻呂は土佐国へ配流され、不破内親王は生活資金として封戸40戸と水田10町を与えられました。

772年には、彼女の呪詛事件が冤罪であったと認定され、再び内親王として復帰しました。しかし、782年には、息子の謀反に連座して淡路国へ配流され、その後も移動を重ねましたが、最終的に彼女の消息は不明です。

伝承

不破内親王にまつわる伝承が千葉県印西市に残されています。彼女はハンセン病に罹り、内裏から追放されたといいます。その際、薬師如来に祈願したところ、病が快癒したと伝わっています。松虫寺の後ろには彼女が祀られた墳があり、内親王はその後都に戻って亡くなり、遺骨が安置されたと言われています。また、聖武天皇が薬師仏のための堂宇を松虫寺として建てたとする伝承も存在します。

江戸時代の大衆文学には、不破内親王の伝承が取り入れられ、彼女の物語が語りつがれました。『房総の不思議な話、珍しい話』によると、不破内親王は幼名を松虫姫と呼ばれ、夢の中で効験あらたかな薬師如来を見つけたことで東国に向かったとされています。彼女は夢に見た薬師堂を見つけ、飽くなき祈りの末に病が癒えたとまで言われています。

現在も松虫寺には「松虫姫御廟」があり、近くの松虫姫公園には、彼女の別れを悲しんだ牛の像が存在しています。このように、不破内親王の存在は人々の心の中で生き続けているのです。また、彼女の伝承は佐倉惣五郎の実録本にも関連付けられ、上流の武士が不破内親王と共に下向した一族として描かれています。彼女の物語は、歴史と共に語り継がれ、さまざまな形で日本の文化に影響を与えています。

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