与作 (ゲーム)
新日本企画（後のSNK）が1979年にアーケード向けにリリースしたアクションゲーム、『与作』について解説します。同名のゲームが同時期に複数メーカーから登場しましたが、ここでは主に新日本企画版を取り上げます。特に、エポック社からカセットビジョン向けに移植され、『きこりの与作』として広く知られるようになったバージョンが有名です。
『[与作]]』は、当時ヒットしていた北島三郎の同名楽曲をモチーフとしています。新日本企画は、タイトーとの提携で『ブレイクアウト』や『スペースインベーダー』の亜流作品を手がけていましたが、『与作』はそれら亜流作品以外のゲームとして、また同社初のオリジナルアクションゲームとして開発されました。『与作』のメロディ使用については、日本音楽著作権協会]の正式な許諾を得ています。[[1979年といえば、『スペースインベーダー』に続く新たなヒット作、いわゆる「ポスト・インベーダー」が模索されていた時期です。この流れの中で、大ヒット中の歌謡曲に便乗する形で、「与作系」とも呼べるゲームが新日本企画だけでなく、多くの中小メーカーからアーケード市場に投入されました。これらの「与作」が大きなヒットを記録した証拠は少ないものの、新日本企画版は後に「SNK」として大手ゲーム会社となり長期にわたって存続したこと、そして「与作系」ゲームとしては唯一家庭用ゲーム機に移植されたことから、特筆されます。アーケード版のテーブル筐体は、定価60万円でした。
プレイヤーは木こりの「与作」となり、次々と現れる敵キャラクターを避けながら、目の前の木を斧で切り倒していくのが目的です。新日本企画純正の筐体では、左右移動の2方向レバーと斧を振るためのボタンで与作を操作します。ゲーム開始時には、北島三郎の「与作」のメロディが流れます。与作がミスすると、ベートーヴェンの「運命」が流れ、ショパンの「葬送行進曲」と共に与作が昇天するというユニークな演出が用意されていました。木を切り倒す際には、『龍虎の拳』のサウンドエフェクトを彷彿とさせる心地よい「パコーン」という音が鳴ります。敵キャラクターとしては、蛇やイノシシが登場し、これらに触れるとミスとなります。敵は斧で倒すか、木の陰に隠れてやり過ごす必要があります。また、木を切っている最中に落ちてくる木の枝や、空を飛ぶ鳥の糞も危険です。鳥の糞に当たると、与作は一時的に痺れて動けなくなってしまいます。木を3本すべて切り倒すと、次の面に進みます。ゲームバランスについては、与作の移動速度が遅く当たり判定が大きいこと、さらにアーケード基板の性能を活かして木の枝や敵、鳥の糞が大量かつ高速に飛来するため、避けきれずにミスとなる状況が頻繁に発生し、難易度はかなり高いと評されました。しかし、「敵を避けながら木を切り倒す」というゲームのアイデア自体は、他社から模倣されるほど評価されたようで、後発の亜流版や家庭用移植版では、プレイヤーが敵を見切って回避できるよう与作を強化するなど、遊びやすいように難易度調整が施されたものも見られます。
新日本企画自身による移植としては、2000年にネオジオポケットカラー向けに発売された『ザ・キング・オブ・ファイターズ バトルDEパラダイス』に隠しゲーム「YO・SA・KU」としてアレンジ版が収録されています。ネオジオポケットの解像度に合わせた調整はあるものの、アーケード版に近いプレイ感を再現しており、鳥の糞がユーモラスなドット絵で表現されています。イノシシを倒すタイミングは厳しめですが、BGMや効果音も再現されました（ただし音質は劣る）。このバージョンは、2022年に発売された『NEOGEO POCKET COLOR SELECTION Vol.2』にも収録されたことで、Nintendo SwitchやPC（Steam）でもプレイ可能になっています。公式移植以外にも、非公式な移植がいくつか存在します。特に有名なのが、1981年にエポック社がカセットビジョン向けに『きこりの与作』として移植したバージョンです。カセットビジョンのローンチタイトル（ナンバリングは「1」）であり、同ハードで最も人気を博したゲームとなりました。アーケード版の木が3本だったのに対し、カセットビジョン版は2本にするなど、簡略化や難易度調整（木の枝の落下速度低下、イノシシの当たり判定緩和、ジャンプ回避の追加など）が施され、オリジナルよりも大幅に遊びやすくなっています。エポック社の開発者はアーケード版を参考に移植したことを認めていますが、版権処理については明確に言及していません。当時はアーケード作品を基にした二次創作が比較的許容されていた時代背景があったとも言われています。このカセットビジョン版をベースにした移植も存在します。X68000向けには、ディスクマガジン「電脳倶楽部」に読者投稿として移植版が掲載されました。これもカセットビジョン版の移植で、速度が2倍になる裏技も存在しましたが、SNKやエポック社、楽曲の著作権者の許諾を得ていない非公式なものです。また、iOS向けにはカセットビジョン版に影響を受けた『Kikori』という作品がリリースされています。
1979年当時、「コインジャーナル」や「ゲームマシン」といった業界紙では、『与作』という名称を持つゲームが複数のメーカーから登場していることが報じられていました。当初は業界内で「幻の名機」と噂され、「木こりが木を切る」ゲーム内容とされていたものが、オーエム社から実際に発売されたことが確認され、一時はオーエム社の製品が「与作」と認識されました。オーエム社の『与作』は、新日本企画版とほぼ同じゲーム内容でした。さらに、ウイング社/ジャトレ社からは『与作とドン平』/『与作とゴン平』、西日本販売からは独自の視点と熊が登場する『与作』、大手セガや傘下のエスコ貿易からも『与作』がリリースされるなど、文字通り群雄割拠の様相を呈していました。アーケードTVゲームリストによると、最も早い発売はオーエム社（1979年8月）で、新日本企画は同年10月とされており、新日本企画版はむしろ後発や他社版の亜流であった可能性も指摘されています。これらの「与作系」ゲームのほとんどは無名の中小メーカーからでしたが、大手セガも参入していました。しかし、結局「ポスト・インベーダー」として大成功を収めたのはナムコの『ギャラクシアン』であり、「与作系」ゲームがヒットしたという記録は見当たりません。ブームが過ぎ去った後の1980年には、中部センターからタヌキが登場する『ポンポコ与作』などもリリースされましたが、出回りは悪かったようです。
ゲーム雑誌『BEEP!メガドライブ』では、本作が「ポスト・インベーダー」の一例として取り上げられ、「幼稚で全然面白くない」と厳しい評価を受ける一方で、「既成の型を破る荒々しいインパクト」や、サウンドエフェクトの「味のある素晴らしさ」は評価されています。また、同誌の記事では、新日本企画が開発したはずの基板に「オルカコーポレーション」のコピーライト表記があったことが記されており、謎となっています。『与作』という名称を持たずとも、木を切り倒すという類似ジャンルのゲームは他にも存在しました（例：増田屋コーポレーションの電子ゲーム）。登場から40年以上が経過した現在では、アーケード基板の入手は非常に困難になっています。
『[与作]]』は、当時ヒットしていた北島三郎の同名楽曲をモチーフとしています。新日本企画は、タイトーとの提携で『ブレイクアウト』や『スペースインベーダー』の亜流作品を手がけていましたが、『与作』はそれら亜流作品以外のゲームとして、また同社初のオリジナルアクションゲームとして開発されました。『与作』のメロディ使用については、日本音楽著作権協会]の正式な許諾を得ています。[[1979年といえば、『スペースインベーダー』に続く新たなヒット作、いわゆる「ポスト・インベーダー」が模索されていた時期です。この流れの中で、大ヒット中の歌謡曲に便乗する形で、「与作系」とも呼べるゲームが新日本企画だけでなく、多くの中小メーカーからアーケード市場に投入されました。これらの「与作」が大きなヒットを記録した証拠は少ないものの、新日本企画版は後に「SNK」として大手ゲーム会社となり長期にわたって存続したこと、そして「与作系」ゲームとしては唯一家庭用ゲーム機に移植されたことから、特筆されます。アーケード版のテーブル筐体は、定価60万円でした。
プレイヤーは木こりの「与作」となり、次々と現れる敵キャラクターを避けながら、目の前の木を斧で切り倒していくのが目的です。新日本企画純正の筐体では、左右移動の2方向レバーと斧を振るためのボタンで与作を操作します。ゲーム開始時には、北島三郎の「与作」のメロディが流れます。与作がミスすると、ベートーヴェンの「運命」が流れ、ショパンの「葬送行進曲」と共に与作が昇天するというユニークな演出が用意されていました。木を切り倒す際には、『龍虎の拳』のサウンドエフェクトを彷彿とさせる心地よい「パコーン」という音が鳴ります。敵キャラクターとしては、蛇やイノシシが登場し、これらに触れるとミスとなります。敵は斧で倒すか、木の陰に隠れてやり過ごす必要があります。また、木を切っている最中に落ちてくる木の枝や、空を飛ぶ鳥の糞も危険です。鳥の糞に当たると、与作は一時的に痺れて動けなくなってしまいます。木を3本すべて切り倒すと、次の面に進みます。ゲームバランスについては、与作の移動速度が遅く当たり判定が大きいこと、さらにアーケード基板の性能を活かして木の枝や敵、鳥の糞が大量かつ高速に飛来するため、避けきれずにミスとなる状況が頻繁に発生し、難易度はかなり高いと評されました。しかし、「敵を避けながら木を切り倒す」というゲームのアイデア自体は、他社から模倣されるほど評価されたようで、後発の亜流版や家庭用移植版では、プレイヤーが敵を見切って回避できるよう与作を強化するなど、遊びやすいように難易度調整が施されたものも見られます。
新日本企画自身による移植としては、2000年にネオジオポケットカラー向けに発売された『ザ・キング・オブ・ファイターズ バトルDEパラダイス』に隠しゲーム「YO・SA・KU」としてアレンジ版が収録されています。ネオジオポケットの解像度に合わせた調整はあるものの、アーケード版に近いプレイ感を再現しており、鳥の糞がユーモラスなドット絵で表現されています。イノシシを倒すタイミングは厳しめですが、BGMや効果音も再現されました（ただし音質は劣る）。このバージョンは、2022年に発売された『NEOGEO POCKET COLOR SELECTION Vol.2』にも収録されたことで、Nintendo SwitchやPC（Steam）でもプレイ可能になっています。公式移植以外にも、非公式な移植がいくつか存在します。特に有名なのが、1981年にエポック社がカセットビジョン向けに『きこりの与作』として移植したバージョンです。カセットビジョンのローンチタイトル（ナンバリングは「1」）であり、同ハードで最も人気を博したゲームとなりました。アーケード版の木が3本だったのに対し、カセットビジョン版は2本にするなど、簡略化や難易度調整（木の枝の落下速度低下、イノシシの当たり判定緩和、ジャンプ回避の追加など）が施され、オリジナルよりも大幅に遊びやすくなっています。エポック社の開発者はアーケード版を参考に移植したことを認めていますが、版権処理については明確に言及していません。当時はアーケード作品を基にした二次創作が比較的許容されていた時代背景があったとも言われています。このカセットビジョン版をベースにした移植も存在します。X68000向けには、ディスクマガジン「電脳倶楽部」に読者投稿として移植版が掲載されました。これもカセットビジョン版の移植で、速度が2倍になる裏技も存在しましたが、SNKやエポック社、楽曲の著作権者の許諾を得ていない非公式なものです。また、iOS向けにはカセットビジョン版に影響を受けた『Kikori』という作品がリリースされています。
1979年当時、「コインジャーナル」や「ゲームマシン」といった業界紙では、『与作』という名称を持つゲームが複数のメーカーから登場していることが報じられていました。当初は業界内で「幻の名機」と噂され、「木こりが木を切る」ゲーム内容とされていたものが、オーエム社から実際に発売されたことが確認され、一時はオーエム社の製品が「与作」と認識されました。オーエム社の『与作』は、新日本企画版とほぼ同じゲーム内容でした。さらに、ウイング社/ジャトレ社からは『与作とドン平』/『与作とゴン平』、西日本販売からは独自の視点と熊が登場する『与作』、大手セガや傘下のエスコ貿易からも『与作』がリリースされるなど、文字通り群雄割拠の様相を呈していました。アーケードTVゲームリストによると、最も早い発売はオーエム社（1979年8月）で、新日本企画は同年10月とされており、新日本企画版はむしろ後発や他社版の亜流であった可能性も指摘されています。これらの「与作系」ゲームのほとんどは無名の中小メーカーからでしたが、大手セガも参入していました。しかし、結局「ポスト・インベーダー」として大成功を収めたのはナムコの『ギャラクシアン』であり、「与作系」ゲームがヒットしたという記録は見当たりません。ブームが過ぎ去った後の1980年には、中部センターからタヌキが登場する『ポンポコ与作』などもリリースされましたが、出回りは悪かったようです。
ゲーム雑誌『BEEP!メガドライブ』では、本作が「ポスト・インベーダー」の一例として取り上げられ、「幼稚で全然面白くない」と厳しい評価を受ける一方で、「既成の型を破る荒々しいインパクト」や、サウンドエフェクトの「味のある素晴らしさ」は評価されています。また、同誌の記事では、新日本企画が開発したはずの基板に「オルカコーポレーション」のコピーライト表記があったことが記されており、謎となっています。『与作』という名称を持たずとも、木を切り倒すという類似ジャンルのゲームは他にも存在しました（例：増田屋コーポレーションの電子ゲーム）。登場から40年以上が経過した現在では、アーケード基板の入手は非常に困難になっています。
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