世界はときどき美しい

世界はときどき美しい

『世界はときどき美しい』（英題：『Life can be so wonderful』）は、2006年に製作され、2007年に劇場公開された日本の長編映画です。長年助監督として経験を積んだ御法川修氏が、初めて監督と脚本を手掛けた記念すべきデビュー作として知られています。

この作品は、それぞれ独立した五つの物語から構成されるアンソロジー形式をとっています。各エピソードでは、その中心人物それぞれの主観的な視点、つまり一人称の語りによって、彼らの内面や周囲の出来事が描かれます。これにより、観客は登場人物たちの個人的な感情や思考に深く入り込むことができます。

本作の大きな特徴の一つは、その映像表現にあります。撮影は全編8ミリフィルムで行われました。その後、デジタル変換を経て、最終的に劇場公開用の35ミリプリントとして仕上げられています。このような、当時の日本映画としては非常に実験的かつ珍しい製作プロセスを採用することで、一般的なデジタル撮影や従来の35ミリフィルム撮影とは一線を画した、独特の質感を持つ映像が生み出されました。8ミリフィルム特有の粒子感や色合いは、描かれる人々の日常や感情に、ノスタルジックでありながらも生々しい、独特の雰囲気を加えています。

国内外の映画祭で積極的に紹介されたことも、本作の注目すべき点です。特に、第19回東京国際映画祭の「日本映画・ある視点」部門に正式出品され、その芸術性と斬新なアプローチが高く評価されました。その他にも、マイアミ、フィラデルフィア、バルセロナ、アテネなど、様々な国際映画祭や日本の各地の映画祭で上映され、多くの観客や批評家から関心を集めました。

物語を彩るキャストには、個性豊かな俳優陣が集結しました。五つの章それぞれに異なる主人公が登場し、彼らを取り巻く人々が描かれます。主な出演者には以下のような顔ぶれが挙げられます。

第一章
野枝：松田美由紀
第二章
蝿男：柄本明
スナックのべっぴんママ：遠山景織子
スナックの酔客：尾美としのり
第三章
まゆみ：片山瞳
邦郎：瀬川亮
第四章
柊一：松田龍平
朋子：浅見れいな
野辺山教授：あがた森魚
第五章
花乃子：市川実日子
静江（花乃子の母）：木野花
* 大輔（花乃子の兄）：草野康太

スタッフとしては、監督・脚本の御法川修氏を中心に、プロデューサーの西健二郎氏、撮影の芦澤明子氏など、多くのクリエイターが参加しています。また、主題歌には鈴木慶江が歌うオペラ「ルサルカ」からのアリアが用いられ、作品全体の雰囲気に深みを与えています。

この映画は、必ずしも華やかではない、市井の人々のささやかな日常や、その中に宿る希望、孤独、愛情といった感情を、実験的な映像手法と一人称の語りを通して丁寧にすくい上げています。それぞれの物語は短編ながらも強い印象を残し、観る者にとって、自身の人生における「ときどき美しい」瞬間について思いを巡らせるきっかけとなるかもしれません。劇場公開後も、その独特の世界観は多くの映画ファンに語り継がれています。

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